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浴衣の君編 6 好きな人と、したいんです。

 すごい綺麗な花火があっちからもこっちからも上がって、ドカーン、ズドーンって、会場だと音も大迫力でさ。  ぞろぞろと帰る人の波、下駄の大行進の中、おおはしゃぎだった。暑くて、人すごくて、慣れない格好は歩きにくくて。くらっとよろめいたんだ。  ――剣斗!  そんな俺の手を引いて、連れてってくれる和臣は王子様みたいだった。浴衣だから、この場合はお殿様になんのかな。  ――手、手手! 手っ!  ――ダメ。繋いでて。お前、浴衣がハンパなく可愛いから。  なんて言ってのけて、隣を歩いてた浴衣女子を赤面させてた。  和臣も楽しかった?  俺は、最高に楽しかった。一回目、去年の時は正直どんな花火が打ち上がってたか覚えてない。和臣の元彼の出現に俺はそれどころじゃなくて楽しめないし、むしろ怖くて、花火鑑賞どころか、和臣が今すぐにさらわれるかもしれないってことのほうが気になって仕方なかったんだ。けど、今年は違う。楽しかったし、それに嬉しかった。  ずっとひとりでやってきた手芸だったけど、ここでさ、浴衣を作るのに神田に手伝ってもらえて、コマメさんにはオリジナル下駄をもらった。友達が加わってくれたことが嬉しい。 「な、ぁ……も、写真いいってば」  友達と手芸楽しめて、そんで、自分で作った浴衣を彼氏が着てくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。 「もう一枚。今度はエロいの」 「あっ……ンっ、ちょ、汗っ」  その作った浴衣を好きな人に脱がされるのも、ビシッと決まるようにって作った彼氏の浴衣が乱れるのも、めちゃくちゃ興奮する。 「やだ、はずいって」  外、すげぇ暑かったんだから、今、していいのはキスまでだろ。絶対に汗臭い。絶対に、今、俺。 「そ? あぁ、それも言ってたな。よく汗って気にしてた。大丈夫だよ、むしろすげぇ興奮するだけ」 「ひゃあああ、ぁ」  ベッドの上で脚の間には圧し掛かるように前のめりになった和臣がいて、その和臣に首筋を舐められて恥ずかしさとそのエロさに、飛び上がって甘い声で啼く俺がいる。 「あっンっ、ちょ、マジでっパンツの中っ、はっ汗っ」  すげぇンだって! 本当に、そのお風呂入らないと、色々恥ずかしくて溶けそう。 「汗? これが? 先走りの間違いだろ?」 「っ」 「可愛くてエロいよ、ホント」  そして本当に溶けて羞恥心がきっと流れてっちゃったんだ。和臣がいるせいで閉じられない脚の間、乱れた浴衣に、ズリ下げられた湿った下着からはみ出た先端には、とろりとした液が滲んでた。 「ンっ、やっ」  その液を和臣の指先が先端にまんべんなく塗りつけてく。 「あ、あっ、あぁっ……ン」  俺の大好きな、頑張った時に撫でてくれる大好きな手に握られて、たまらなくなる。切なくて、後ろに手をつきながら、腰が揺れて何かを突き上げる真似をした。 「してみたく、ならないか?」 「え? ぁ、ン、何?」  気持ち良さに支配されてて聞き逃した。何を? 何、したくなるの? 「セックス」 「ぁ……」 「女の子と」 「は? 何? なんでっ、ン、ぁっやぁ」 「ここ」  言いながら、ペニスをぎゅっときつく握られて、そのまま上下に扱かれて、息を飲むことも忘れる。 「したことないだろ? だから」 「バカ、っんだよ、それ」  つまり、俺が女とセックスしたくならないのかよってこと? 好きな奴とこんなに気持ちイイことしてんのに? 「怒る、かんな」 「けど」 「和臣の手だから、気持ち、イイんだろっ」  そして、身体を後ろに倒して、体重を支えていた手でぎゅっと、その大きな掌を包み込んで自分でも動かした。 「あ、ぁっン、あっ」  オナニーみたいにしながら、蕩けた声を上げて、腰を揺らして、その掌に自分のペニス擦り付けて。 「俺、女としたいなんて、和臣と付き合ってから一回も思ったことねぇよ。ただ、ぁっ……ン」  この手が好き。大きくて、あったかくて、そんで、俺の事を丸ごと包み込んでくれる優しいこの手が大好き。 「好きな人となら、毎日だってしたいのに」 「……剣」 「なんで、その好きな人が、そんなこと言うんだよ。泣くぞ、マジで」  じゅくじゅくとやらしい音を立てて、ペニスが掌の中で気持ちイイ。 「あ、ンっ……和臣っ」  はしたないくらいに開いた脚の間で、汗も先走りもすごくてびしょ濡れのペニスがもう。 「イく……和臣っも、イくっ」  溶けてちゃいそうなくらい熱い。 「剣斗」 「あ、ああぁぁぁぁぁっ」  どの手でもいいわけじゃない。誰でもいいわけじゃない。好きな人とエロいことがしたいんだろ。 「あっ……ぁっ……ン、和臣っ」 「もう泣くぞって、もう泣いてるだろ」 「ンっ……ん」  射精直後のキスはダメなのに。 「あンっ」 「エロい声」 「ン、ぁ、だって」 「だから、ホント、困るんだ」  イったばっかのペニスにぶつかるゴリゴリに硬いそれに、吐息が一気に熱を増す。 「あ、やだ、これ、ダメっ」 「剣斗」 「ダメだって」  痛そうなくらい、暴発寸前まで張り詰めたペニスに裏筋を擦り上げられ、切ない声がまた零れた。全身が疼くんだ。今すぐどうにかして欲しくてたまらなくなる。 「お前がたまにダメだって、イヤだっていうだろ」 「?」 「無理させてんじゃないかって、思ったけど」 「あ、これはっ」  だって、和臣に触られちゃったら、俺またすぐにっ。 「何回でもイっていいよ……剣斗?」 「あ、やっ、ぁ、んんんんんんっ」  今イったばっかのはずなのに。そんな戸惑う暇もなく、心の中が読めたみたいに耳元で囁く甘い声にイかされた。 「あっ……」  二回も連続でイったのに。 「あ、ン……和臣、もっと」  欲しがりな俺は、まだちょうだいって、自分で作った彼氏の浴衣を乱れさせて、その首筋におねだりのキスをした。

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