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「ひねくれネコに恋の飴玉」 11 蜜柑コロコロ、落っこちた。

「あ、蜜柑だよね! えっとねー、半分って言ってたけど、仰木君は若いから、たくさん持っていきなよ。待ってて、袋分けるからさ」 「……」  バカみたいだ。トキメクとか、いい年した、酸いも甘いも知ってる大人が、何してんだかって、思う。自覚あるよ。何、緊張しちゃってんの? 年下の男の子に、何身構えてんの? 意識しすぎじゃん。  バカだ。  カッコ悪い。  蜜柑を袋に入れるのに、指先が震えてるなんてさ。恥ずかしい。 「剣斗君がさぁ、一日五個食べろとか言ってた。ノルマっすよ、だって。可愛いよね。そりゃ」  そんなわけないじゃん。  きっとさ、仰木君は思ったわけよ。大人な恋愛トークから外されてたって思って、そんなガキ扱いするなよってさ。あんたが思っているほど子どもじゃないんだけど? って、そう思ったんだよ。 「そりゃ、仰木君も好きになるよねぇ。ああいう子ってさ、健気で、可愛くて、強気だけど、甘えられたら、男は皆」  そうそう、そうだった。仰木君の好きなタイプって、剣斗君みたいな子なんだってば。こんなひねくれて、こんな擦れた大人じゃないんだって。  あぁよかった。もう少しで忘れちゃうとこだった。 「京也さん……」 「!」  俺みたいなのじゃないって、忘れちゃう、とこだった。 「京也さん」 「……ぁ」  違うってば。勘違いしないように。全然違うって。俺のことなんて、別に、彼は――。 「京……」 「俺」 「……」  血迷うなよ。俺。大人なんだから、かっこ悪い。 「意識……してるよ」  彼は――。 「俺、君のこと、男として、意識してる」  信じられない。  バカじゃないの。  何、言っちゃってんの?  年下の男相手に、こんな切なくなってさ。今、自分の中に溢れた言葉に驚いて。 「俺っ……っ」  泣いたりなんかして。  俺みたいなのが泣いたって、綺麗じゃないっつうの。  剣斗君みたいなのが必死になって泣くほうが絶対に萌えるんだってば。  恋愛なんて、今更でしょ。ごっこ程度にしておいたほうがいいってわかってるくせに、俺にはこの仕事があるじゃん。自分の持ってる技術だけは信用できるだろ。それで生きてくって。男いなくたって、恋なんてしなくたって、やっていける。食っていけるって、そう思ったじゃん。  なのに、やっぱり溢れてしまう。 「仰木君のことっ、」  大人が年甲斐もなく、泣いてしまう。 「っ!」  ガタン! って、作業代が大きな音を立てた。そのあと、蜜柑が転がり落ちる音がして、ぐらりと揺れた視界と激突するみたいに重なる身体、急に塞き止められた呼吸に、眩暈がした。 「っン、ぁっ……ふっ、ン」  押し倒されて、強引に唇割られて舌を深く挿れられて。 「ぁっ……ン」  じゅる、なんて滴り落ちる果汁みたいな音を立てて、口の中が舌にびしょ濡れにされていく。角度を変えて、また深く差し込まれて、今度はうなじを手で押さえられながら、濃厚な口付けに息が止まる。 「ンっ」  食べられちゃいそう。 「仰木君……」 「柚葉」 「え?」 「俺の下の名前、柚葉だよ……呼んで?」 「あ、柚葉っ」  首筋に触れる唇にキスをされたくて自然と背筋の反らせる。そこに、甘いリップ音がして、反射的にまた名前を呼んだ。あまりにその声が甘えていて、気恥ずかしいのに。 「……良い声」 「ぁ、ン、柚葉、ぁ」  気に入ったのか、彼がそう呟いて、もっとたくさんキスをする。首筋に、顔をあっちの方向に向けて、まるでドラキュラに血を吸われてしまうみたいに晒した喉元を吸われて、思わず声が跳ねてしまう。 「あっ……ん、ぁ」  押し付けられたのは硬くなった、彼の、それ、で。 「あ、あの……」 「京也さん、顔、真っ赤だよ」 「! こ、これは!」 「すげ、可愛い」 「はっ? な、何っ、ぁっ……ンん」  年下のくせに。 「やば……」 「あ、や、吸っちゃ、あっン」  シャツのボタン外すの早いよ。キスでクラクラさせないでよ。そんな……。 「可愛いよ。マジで」 「っ」  男の顔なんてしないでよ。 「京也さん」 「あ、ンっんんんっ」  乳首を吸われて、腰が浮き上がるほど身体がしなった。 「あンっ」  乳首にキスされて、あの仰木君の、柚葉の舌に舐められてて。やだ。なんだよ、これ。口元を手で抑えて声を止めたいのに、それすら、彼の手に遮られてしまう。 「ン、やぁっ……ン」 「京也さん……」 「あっ……っ」  君の、男の顔に、ドキドキしちゃうじゃん。 「あっン……んん」  ゆっくりと下へずれていくキスに、年甲斐もなく胸が高鳴る。胸、お腹、そのまま下腹部、なんて素直なことをせず、生意気にも期待を裏切るように脇腹を下でくすぐったりしてさ。 「あ、はぁっ」  切なげな声を漏らすと、また乳首を音を立てて吸う、意地悪な愛撫なんてして。 「やぁっ」  乳首を舌で転がされるように気持ち良くされて、たまらない。君が。 「あっ……んんんっ」  君が口を開けて、乳首を食む仕草をあえて見せつけてくることにも煽られてしまう。もう、意地悪だな。君が食べてくれるんだと期待してたのに、食べてくれないから、自分から押し付けちゃったじゃないか。君の口に背を反らせてまで、乳首を落ち着けて、舌に濡らされた瞬間、クラクラしてしまった。  期待に、興奮に、それと、君のことを欲しいって思う自分に、ドキドキしてる。 「あ、あっ」 「京也さん」 「あっぁ……ああああっン」  年上なのに。セックスなんて、遊びでいくらでもしてきたのに。君なんて、生意気なガキだって思ってたのに。  剥かれて、そそり立ってたペニスにも君がキスしてくれた瞬間、嬉しそうな満足気な溜め息を自然と零してしまって、とても、すごく恥ずかしかったんだ。

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