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「ひねくれネコに恋の飴玉」 12 初めてしたの
セックス? そんなものたくさんしてきたよ。
好きだ、愛だ、って、そんなものなくたってできるじゃん。性欲は数日に一回ずつ発散したくなるでしょ。その方法のひとつでしかない。ハッテン場だってけっこう行ってたし。便利なんだ。とても合理的でさ。やりたい時はそういう場所で、好みの男探して、ノリで、遊びで、セックスしてた。やりたい男ばかりが集まってるんだから話はとてもスムーズ。いや、話すことすらないかも。
男だし。
向こうも男だし。
だから、セックスなんて別に大したことじゃ――。
「あ、ああああ、あの、柚葉君、あ、あの、いいよ、えっと」
大したことじゃなかったんだ。
「京也さん?」
「あ、あの、その……」
つい、この間までは。
「えっと」
「……」
セックスなんて、ただの行為でしかなくて、恥ずかしいとか、照れとか、そんなもの、なかったのに。
「あの……」
どうやるんだっけ。
「……」
どうやってセックスってするんだっけ?
「だから、えっと」
忘れてしまった。
頭の中が真っ白だ。ハッテン場とか、セフレとか、あと、えっと、忙しくて、ご無沙汰してた時は。
「京也さん?」
久しぶりにする時は。
「あ、あああの、最近してなくて、その、だから、まだ、その」
ほぐすとこから始めないといけなくて、そんで、今ここ、ローションなんてないから、そしたら。
「京也さん」
「あ、ちょっと待っててよ。今」
「あんた、可愛すぎ」
「え? ちょ、わっ、ぁっ、やぁぁっ」
ペニスを咥えられて、ヒクンって引きつった背中、反り返る腰、そこを差し出すようにして、そして、彼の口の中で溶かされる。
「あ、やだっ、柚葉っくっ……ン」
「あんたは気持ち良くなってて」
「や、ぁっ」
ホントに溶けちゃいそう。
「あっ……ン」
口の中で気持ち良くされたペニスが、チュって音を立てて解放された瞬間、ぷるんと跳ねた。充分すぎるくらい口の中で唾液を溜めて、そのまま。
「や、ぁっ……」
根元のところにキスをされながら、垂らされた唾液が、孔を濡らしてく。
「あ、やだっ」
恥ずかしくて、死んじゃいそうだ。
「あぁぁぁっン」
指が濡れた孔を抉じ開けていく。柚葉君に、孔を柔らかくほぐされてるなんて。
気持ち良くて、死んじゃう。
「ひゃあ、ぁ、ぁっ」
指が探り当てたポイントは前立腺。ゲイなら、男同士のセックスなら、そこは、充分すぎるくらい気持ち良くなれるポイントってわかってる。わかってるけど、でも、こんなのは、知らない。
「あ、やだっ、柚葉くっ……ン、んんっ」
君の指が押してる気持ち良いところは、俺の知ってるのと違うの?
「ひゃ、あっン、ダメ、も、あっ、はっ……ン」
なんで、こんな何も考えられなくなるの? 全然違う。こんな、お腹の下のところ熱くなんてなったことない。舌が蕩けたみたいに、なるのなんて、なかった。指先から痺れて、怖いくらいに身体がしなって、怖いから、相手を掴んでしがみついちゃうのなんて、やったことない。
「あ、やぁぁっ……ン」
「……なんか、ムカつく」
「ぇ、ぁ……柚葉くん?」
気がついたら、肩のとこ、鷲掴みにしてた。服がしわくちゃになるくらいに、ギュって握って、まるで子どもみたいに。そして、肩を掴まれてた君は苦しそうな顔をしてた。苦い? 痛い? 怒って、る?
「こんな、可愛いあんたを見たことある奴、いるんだなぁって思って。この前の、奴とかも」
イラついてる、の?
「なんか、ガキくせぇ……」
あぁ、どうしよ。溢れちゃいそうだ。もう、好きが、溢れてしまいそうなくらい。
「な、いよ」
思わず、しがみついてしまった。本当に子どものように。
「こんなふうになったこと、今まで、ないよ」
「……」
「柚葉君が、初めて、だよ?」
遊びのような、挨拶のような、触れ合うだけのキスをした。しがみついて、作業台の上で半裸で、君の指に喘いで、涙まで零して、ただ触れるだけのキスをして、そして、震えてしまった。
「っ、京也、さんっ」
「あっ、ぁ、ああああああっン」
だって、ただのそんな戯れみたいなキスですら、最高に気持ち良かったんだ。だから、これ以上、君を深いところに招いてしまったらって、怖くなった。怖くなったのに、君に誰より奥まで来て欲しいとも思った。
そして、繋がったら、気持ち良くて、たまらなく気持ち良くて。
「あ、あっ、ぁっ……柚葉っ、く、ンっ、ぁ、あああ」
「京也っ、さんっ」
「あ、ふあっ……ぁ、あっ!」
君が、好きで、好きで。
「あっ、ン、柚葉っ……くん、あっ、あンっ、ぁ」
「京也さんっ」
「好き、ンっ、好き」
ずちゅぐちゅ、やらしい音を立てて、君が荒々しく中を突く度に揺れるのすら悦びになる。
「あっ……ン、好き」
君に突き上げられてるのが、たまらなく気持ち良くて。
「あ、もっと、奥、して」
「っ」
「柚葉君の、で、奥のとこ、いっぱいしてっ」
ただしがみついてるばかりだった。君が奥を突いて、貫いてくれて、俺は抱きついた腕の中で喘いでる。きつそうに息を乱してるのが愛しくて、キスをした。啄むように、揺らされながらもキスを繰り返し、繰り返ししてたんだ。
「好き、好きっ」
好きって言う度に、キス、してた。
「柚葉君、ぁっ」
「京也っ……」
「あ、や、イくっ、イくっ……ン、んんんん」
そしたら、最後、君が俺の中で達しながら、息もできないくらいに深くて濃密なキスをくれて、俺は、ただ、しがみつきながら、イってしまった。
「あっ……ン」
本当にただ、抱きついて、君に抱かれてた。
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