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「ひねくれネコに恋の飴玉」 13 しちゃった。

 しちゃった。 「っ、はぁっ、京也さんっ」  柚葉君と、セックスしちゃった。  まだ、中でドクドクいってる。中出しセックス、とかさ。  すごい嫌いだった。これ。事後処理面倒だし、その面倒請け負うのネコだけだし。その事後処理だってさ、してる最中ってどこか情けないし。だから、これ、嫌いだった。絶対に中にしないでよって、そこで壊れるムードなんかクソ喰らえだった。そこで「はぁ? ノリ悪いな」って思うような相手だったら、それこそ、「はぁぁ?」って追い返してた。なのに――。 「ごめん。京也さん」  全然嫌じゃないなんて。 「どうしよ」  君が俺のお腹の中でドクドクいってるのが、嬉しいなんて。 「すご、気持ちよかった」  覆い被さる君に擦り寄るように、額同士をコツンってして、溜め息と一緒に溢れた無意識の言葉だった。 「京也さ、……」  そして、ぽかんとした顔の彼と目が合って、そこで急に我に返った。びっくりされてしまった。呆れた? スレまくった年上なんて、あんまだったかも? いや、っつうか、年上のくせに、経験値豊富なはずなのに、ほぼなんもしてないじゃん。 「あ、あの、俺、ほぼ、マグロだったね。えっと、こちらこそ、ごめん。なんか、あんま気持ち良くなかった、よね。俺、調子変っていうか、ちゃんと、その……」 「……」 「俺、夢中で、あんま」 「アホ、なんすか?」 「は?」 「いや、だって、気持ち良くなくて、こんなんなんないでしょ」 「ひゃっ、やぁっン」  まだ芯を保ってた彼が奥の奥をクンって突いて、甘い悲鳴を零してしまった。 「こ、こんなって」 「こんなって、こんなです」 「あ、やぁっ……ン、ちょ、動かすの、ズルっ、い」  平気、だった? その、スレた年上のくせに、なんもしないで、ただ抱かれてるだけの俺でも。大丈夫? ねぇ、呆れてない? 「それに、マグロってね、あんた、一体どこをどうしたら」 「…………だって。下手、だったでしょ」 「下手ってね……別に、下手とか上手いとかなくない? それで言ったら、俺は?」  今度は君が額を擦り寄せた。 「下手だった? 上手かった?」 「……」  その額のとこからじんわり熱が生まれてきてしまう。 「わ……わかんない。そんな余裕なんてなかったもん」 「もんって……あんたね……」  だって、本当にそんなこと考える暇もなかったんだ。君のことを考えてたら、君で溢れて、もう、何がなんやらだった。まるで、初めての時みたいに、ドキドキしてるばかりだった。 「可愛いな」 「か、可愛いって! 俺、年上だけど!」  大人なんですけど? 君は学生で、そんで、俺は会社をちゃんと持ってる、それなりの、いや、けっこうしっかりとしたいい大人なんですけど? 「や、ふつーに可愛いでしょ」 「は? あ、あ、あ、あ、あの」  可愛いなんて、言われたこと……あ、あった。あったっけね。前に、セックスの時に、可愛い声とか、可愛いねとか、綺麗系だけど、可愛いって言われたことあったっけか。でも、その時はありがとうって、聞き流してた。ベッドの中で、セックスの最中に零す言葉なんて戯言でしかないから。ムード作りのためのお飾りでしかない。けど、君のくれる言葉は、なんでそうならないんだろう。  なんて考える必要ない。  それは、俺が、君のことを。 「あんたのこと好きなんだから、あんたが何したって可愛いでしょ」  好きだからだ。 「京也さん?」  君に可愛いなんて言われて、まるで処女童貞の十代みたいに慌てふためくのは、君のことが好きだからだ。 「京也さん?」 「…………」 「は? ちょ、ぇ?」 「っ」  まるで戸惑う子どもみたいに、たかが「両想い」ってだけでこんなふうに泣いてしまうのは、君に恋をしてるからだ。 「ど、しよ。嬉しくて……死んじゃいそう」  両想いってなんだよ。 「こっちが死にしそう」 「え? なんで? どっか、痛い?」 「あんたが、可愛くて」 「!」  恋って、なんだよ。 「マジ、勘弁」 「? あ、や、なんでっ、ぁ、ちょっ、なんで、おっきくっ……ン」  ズクンって、柔らかく濡らされた奥を咥え込んだままだった柚葉君に突かれて、背中がしなった。 「あ、やぁぁ……ン」 「京也さん、ごめん」 「あっ、あぁっ、ん」  中に染み込んだ君ので、濡れた音が卑猥に響く。ズンって奥を突かれて、小刻みに中を擦られて、溜まらなくて、君のことがまだ、もっと欲しいって腰が揺れるのを止められない。だって、俺の中にいる君が硬くて太くて、すごく気持ち良さそう。 「あ、柚葉、ぁっ」 「京也、さんっ」 「あ、ああっ、あっ」  激しく攻めてくる君がすごく気持ち良さそう。 「あ、はぁっ……ン、あっ、あ、だめ、また、イくっ」 「いいよ。何回でも」 「あ、ぁっ……あ」  両想いでするセックスがすごく気持ちイイ。 「あ、柚葉っ、イくっ、ね、ぁ、イくっ」  荒々しく攻めるくせに、抱きしめてくれる腕はきつくて、苦しいくらいなのに、切なげな君にとても優しいキスをされて。 「あ、ぁ、あああああっ、ン」  イった瞬間、身震いしてしまった。二回目なのに、自分の胸まで飛び散るそれに、息も乱れて、力なんて入らないよ。 「あっ……柚葉」 「……」 「あ、ちょ、今、イっ、ン、んんっ」  その力の入らない身体を抱えて、君が奥を貫く。ねぇ、たくさん、激しく、いっぱい可愛がらないで。 「京也さん、可愛いすぎ」  そんな抜かずのナントカみたいなのなんて、マジ勘弁って思うはずなのに。以前だったら絶対に思ってたのに。 「ン、好き、柚葉、っン、もっと、してっ」  君だと、もっと欲しくなってしまうんだ。もっと好きになって、もっと恋しくなってしまうから。だから、まるで戸惑う子どもみたいにただ君にしがみついていた。

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