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「ひねくれネコに恋の飴玉」 28 すごーい、すごく甘い

 ねぇ、わかってる? 君が言ってたことって、かなり、すごーくすごいことなんだよ?  ――ど、どういう意味? あのねっ、ずっとってね。  ――意味、わかってるよ。  ねぇ、あの機械、きっとすごく長生きだよ。父が使ってる裁断機、俺が子どもの頃から変わってなかったもん。だから、それのメンテとかさ。  わかってないって。  絶対にわかってないと思う。  まだ二十歳そこそこ、お酒の飲み方だって拙い……って、それは俺だけど。同窓会で足ふらふらだったけど、元彼に絡まれて、なんか号泣しちゃったけど。でも、とにかく年下の君はわかってない。  きっとこれからたくさんの人に出会うでしょ。一生に一度じゃないの、知ってる? 恋って、いくらでもできるんだよ? 「京也さん?」  遊園地デートの最後あんなことを言うから、遊び疲れて電車の中で居眠りする君の隣で、そして帰って来てから、ベッドの上で君を待ちながら、ずっと考えてた。 「……俺より可愛い人がいるって知ってる? 綺麗な人だっているの、わかってる? もっと、素直で、柚葉に尽くしてくれる人だって、ぜーったいにいるよ」  ずっとって言った柚葉のことを、考えてた。 「……京也さん」  君がシャワーを浴びてる間ずっと。 「……京也」  上半身裸で濡れた髪がセクシーで、まるで「男」みたい。  ベッドに乗って、動物みたいに四つん這いで近くづく君に身動きひとつ取れないよ。もうすぐそこにいるのに、逃げたいのに、でも、君のものになりたくて、待ち望んでしまう。君に食べられてしまいたい。 「ほ、他の人のこと、好きになる、かもしれないじゃん」  食べて欲しくて、たまらなかったんだ。 「俺に、飽きちゃうかも、しれない、じゃん」 「……ねぇよ」  本当に? ねぇ、ホント? 「ン、んっ……ン」  齧り付くようなキスに、トクンと喉奥が音を立てて君の吐息ごと飲み込んだ。 「ンっ…………んく」  長い長い口付けの後、唇が離れる瞬間、舌に拭われてしまうような濡れたキス。 「あ、柚葉……」  今、この唇にキス、されちゃったんだ。そう思いながら、指先で押して、触れて、今度は俺からキスをした。頬を包み込むように手で覆って、そのまま首を傾げて、キスをした。濡れた音を立てて、口を開ければ、舌が入ってきて、中をまさぐられる。水音を立てて絡まり合うようなキスをしながら、そのまま体勢がもっと前へ、君がもっとこっちに来て、お互いの鼻先が潰れるほど、もっと。 「ン、ぁ……柚葉」  やらしくて、どこまでも甘い、甘いキスに声までとろんとした。 「ね、柚葉」 「?」 「あのね……」  知ってた? 実はね。 「初めて、普通にベッドの上で、するの……」 「……」 「あは、なんか、ドキドキして……」  一度目はデスクの上、二度目は玄関からのソファへ移動で流れ込むように、三度目は、めちゃくちゃすごいとこ。実家のコタツ。  笑っちゃうくらいにベッドの上じゃないんだよ。そして、まだ君と三回しかセックスしていない。まだ君の恋人になってから一ヶ月も経ってない。それなのに、君は「ずっと」なんて言ってのけてしまう。  まだ数週間なのに、ずっと、になれたらと心から願ってしまう。 「柚葉……」 「好きだ」 「っ」 「あんたのことが、すげぇ、好きだ」  まだたったの三回しか君に抱かれていないのに。 「好きだよ。京也」  今までの誰よりも深く濃く、すごくたくさん、溢れるほどに愛してもらってる気がしちゃうんだ。  あー、セックスしたい。ムラムラする。今日はしたいなぁ。抜くっていうのでもいいけど、今日はちょっとエッチなことしたいかも。って思ったこと、あるよ。欲求不満解消のためのセックス。  今は違うの。 「はっ! ぁ、ン……ぁ、やぁっ……ン」  抱っこされながら、ぎゅっとその首にしがみついて甘い悲鳴を上げちゃうくらい、下から奥を突き上げられた。 「ぁンっ……柚葉ぁ」 「……」 「や、ぁ、それ、またイっちゃう」  奥のとこに君の先端が当たると、感じすぎて指先が君の肩に爪痕つけちゃうよ。 「あ、あっ、やだってば、それ、ダメっなのにっ、ぁ、ン、やぁぁっン」  仰け反って喉を鳴らしてしまう。そんで、感度の指針がおかしくなってて、腕に力なんて入らず、このままベッドの上に倒れちゃいそうな俺を腕一本で引き寄せたりしないでよ。その腕で俺を抱えながら、濃厚なキスなんてしないでよ。 「ぁ、ンっ……柚葉ぁっ」  カッコよくてドキドキするじゃん。 「あ、ひゃぁっ……ン、イくっ」  下から齧り付くようにキスをされて、吐息ごと食われるような荒々しさに、身悶えてしまう。気持ち良くてたまらない。こんなの、不安になる。 「ぁっン、や、だぁっ……」  乳首を口に含まれて、齧られたら、中いる柚葉を締めつけた。齧られてとても感じちゃったって、舐められて吸われるとたまらなくて、イっちゃいそうだって、ペニスにしゃぶりついて教えてしまう。口元を手の甲で押さえて、年上なら持ってるでしょっていう余裕なんて皆無の、甘えた声を堪えてるのに。これじゃ、君のペニスがすごく気持ちイイって、こんなに気持ちイイこと、したことないってわかっちゃうじゃん。 「あ、あっ、ぁっン、や、柚葉ぁっ、ぁ、ン」  柚葉の頭を抱え込んで、のぺっとした胸の中に閉じ込めた。俺のせいで髪がボサボサになった柚葉の大きな手がうなじを撫でてそのまま力強く引き寄せられ、キスでも、身体の奥でも、君を感じる。 「……京也」 「っ、ン」  その腕の中からこっちを見上げて微笑まれて、心臓がトクンと小さく音を立てた。見つめ合うだけで、ドキドキするんだ。ほら、ね? すごい、でしょ?  覗き込んだら、柚葉の瞳の奥に俺が映ってた。君の瞳に映る俺って、変な顔、してない? ちゃんと、君から見て可愛い? ねぇ、ねぇ。  柚葉に言いたいことたくさんあるのに。いつも胸ところが切なくて、半分も言葉にできないんだ。  だから、触れ合ったところから、こうして繋がったところから全部伝わればいいのにね。  すごくすごく大好きなんだ。さっきあんなふうに言っちゃったけど、でも、他の人のことなんて好きにならないでよ。きっとたくさん可愛い子も綺麗な男もいて、柚葉のことを好きになるかもしれないけど、でも、俺のことをずっと好きでいて。ずっとずっと、ずっと好きでいて。 「わっ」  いきなりグラリと揺れて、柚葉ごとベッドに沈み込んだ。どこも痛くない。柚葉の大きな掌が頭を、力強い腕た身体を大事に扱ってくれたから、どこも痛くしてないけど、中に君を咥え込んだままだったから、今までと違うところを刺激されて、鼻にかかった声が零れる。  もうびっくりするじゃん。急に、倒れたりするから――。 「すげぇ」 「?」 「好きだよ」 「……」 「マジで、本当に、好きだから」  びっくり、しちゃったじゃん。 「好きだよ」 「あっ」  ズンと重く甘い痺れに襲われた。 「あ、ぁっ」  深く奥を抉られて、抉じ開けられて、苦しいのすら気持ちイイ。 「ぁ、ン、柚葉っ」  押し開けられて、引かれて、もっと奥まで君が来てくれる。何度も何度もゆっくりじっくり攻められて、恥ずかしい甘い声を抑えることすらできなくて。思わず枕にしがみついた。腰を押さえるように鷲掴みにされて、深く貫かれたら、喉奥から熱くて中が溶けちゃいそうな吐息が零れる。 「やぁ……ン」 「京也」  気持ちイイの。 「ぁ、あ、イっちゃう」  不安になるんだ。こんなの知っちゃった後で、君がいなくなった後じゃ、もう無理だもん。どこに行ったって、どんな良い男相手とだって、無理、だもん。 「あ、あっ、ダメっ」 「……京也」  枕にしがみついていた手を柚葉が掴んで引き寄せた。 「……好きだ」  そう告げた唇が指に触れた。一箇所、ほらよく、誓いをする時のあの指に。 「……ぁ、柚葉」  触れて、悪戯っぽく笑った。無邪気だけれど。 「も、俺も、すごい、大好き、だよっ」  男の色気も混ざった表情は、もう、なんか破壊力抜群で。そんな恋人の腕の中に閉じ込められた俺はまるで砂糖菓子にでもなったみたいに甘い声で甘い告白をたくさん、してた。

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