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柚葉(攻め)視点(ひねくれネコ番外編) 5 君だけ

 ずっと一人でやってきたって、京也の仕草にそれがたまに滲んでる。人の絆創膏を貼るのがやたらと下手なとことか、一人がけのソファしかないとことか、大事な時に、しんどい時に、甘えるのがクソ下手くそなところとか。  怖がりで、不器用で、たまらなくひねくれてる。 「ん……ぁ、あっ」  そんなあんたの隣にいることを許される男になりたい。  けどまだガキなんだ。  すげぇ好きな人にさ、抱いて欲しいとねだられて慌てて実習戻って、ソッコーで終わらせたくらいにはまだガキだ。  呆れるだろ? その前まで、苛立って部品加工ミスしまくってたくせに、あんたのあの一言で、テンションマックスになって、すげぇ集中力発揮するとかさ。剣斗がびっくりしてたっけ。自分でもまだまだガキだなって思うよ。  でも、戻ったら、ちゃんと俺がじっとしてろよって、誰かに声かけられてもガン無視してそこにじっとしてろと言った場所に座って、コーヒーを飲んでたあんたが笑ってくれたから。  すごい必死な顔つって、やたらと嬉しそうに笑ってくれたから、いいやって、思った。  あんたが笑ってくれるなら、ガキでもなんでも、とりあえずいいやって、そう思ったんだ。 「どうすっか」  前戯のキスをぴたりと止めてそう呟くと、不思議そうな顔をしてた。 「これ……」  かざして見せたのは傷だらけの手。冷静になって見たら、結構ドン引きするくらいに傷だらけだった。 「……ぁ、そっか、沁みる、よね」 「いや、そういうことじゃなくて、実習のあった日は手、どうしたって汚れが残るから、いつもは避けてんだ」 「……」 「この指じゃ、あんたの身体触れないだろ」  どんだけ綺麗に洗ってもほんの少し、砂粒くらいは汚れが爪に残ってる。残ってるっていうか染み込んでて、まぁ翌々日くらいには綺麗さっぱりになるんだけど、ここ最近はフルの実習講義が続いてたせいもあって、あんま綺麗じゃない。しかも傷だらけ。  あんたの身体を傷つけるような抱き方はしないけど、でも――。  手を止めて考えていると、ふと視界が暗くなった。 「見、見ちゃダメだからね」  視界を遮ったのは京也の手。綺麗で繊細で、すげぇものを作り出せる手。 「あっ、ア……柚、葉っ」 「京也」 「見、見ちゃダメっ」 「わかってるって、あんたの手が邪魔で見えねぇよ」 「絶対にっ、っ、見ちゃ、ダメっ」 「見ねぇって」  ベッドに座っている俺の腰の辺りに跨って、後ろを自分で柔らかくしてる。片手で俺の目隠しをしながら、もう片方の手で自分の指で、そこをいじって。  自分で準備するのを見られたくないと、俺みたいなガキよりももっと大人な男に抱かれたことが山ほどあるだろう京也が頬を赤くしてた。その山ほどしてきたセックスの中で自分でしてみせるような挑発的なことだってしたことあると思うのに、真っ赤になって、怒ったような顔で見るなと呟いて、その手で目隠しをする。 「あっ……」  甘い声を上げてる。 「ん、柚葉っ、ぁっ……! ちょっ、見ちゃっ」 「こうしてたら見えねぇだろ。それに」  その細い腰を引き寄せて、敏感な乳首を口に咥えた。  舌で乳首を押し潰すように舐める様子を京也に見せつけながら、目隠しをしていたその手を掴んで、後ろに連れて行く。 「あんたの指、細くて綺麗だから」 「あ、あ、あっん……乳首っ」 「両手で解さないと、俺の、入らねぇよ」 「あっ! 指っ……ぁっ、やっ……これ、っすごいっ」  くぷりと孔にもう片方の指を俺が挿れて、そのまま俺の両手は尻を割り開いてやる。京也の指が行き来しやすいように。 「あ、あ、あっ……柚葉っ、あっ」  そんで、キスを左右の乳首に交互に。 「あっン、もっ……無理っ、柚葉っ」  興奮で、身体が軋む。 「早く、欲し、い、柚葉っ」  熱で、理性が溶ける。 「挿れて……柚葉」  キスをしたら、京也の舌も同じくらいに熱くて、この人も同じくらいに切なそうな顔をしてくれた。  すげぇ大事なのに。  すげぇ大切な人なのに。  めちゃくちゃに抱きたいって思って。 「めちゃくちゃに抱いてよ、柚葉、の、これ……欲しい」  キツく抱きしめてた。 「あっ、あ、あ、あ、っんっそこっすごいっ」  ほっそい腰。 「あぁぁぁぁっ」  それを鷲掴みにしながら、奥を深く貫いた。  仰反る身体を深くまで挿し貫いたまま、コリコリに硬くなってる乳首に舌を這わせて、しゃぶりつく。 「あ、一緒にしたら、ダメ、だってば」  あっまい声。  やらしい身体。 「死んじゃいそう、良すぎて」  この人を抱いたことがある男は山ほどいて、この声を知ってる男も、この身体を味わったことがある男も山ほどいて。 「柚葉、キスも、欲しい」  このキスを知ってる男も山ほど――。 「柚葉、だけ、だから」 「?」 「柚葉だけなんだから」  山ほど。 「だから、もっと奥まで来て」  子どもみたいに京也が抱きついて、耳元で囁いた。 「来ちゃ、ダメなとこ、来て」  俺だけを、入れてあげると、そう。 「あ、柚葉っ、あぁあっ、あ………………っ!」  囁いて、腕の中で甘く啼いて、俺にしがみついた。

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