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真夏のプール編 2 お湯の温度はジャスト四十度
「なぁ、プール、そんなに無理しなくたっていいんだぜ?」
暑い中、湯船入るのにさ、どっち派がいいんだろうな。
暑いけど、あっついお湯で、ぷはぁってスッキリしたい派とさ。
暑いから、ぬるーいお湯で、ゆっくりスッキリしたい派。
きっと暑いからこそ熱いお湯に浸かりたい派は、飯ならカレー派。
ぬるーいお湯は、そうめん派、だと思うんだよ。
「……無理はしてないよ」
低音の響き方が優しい和臣の声がバスルームに響いた。
うちは、ぬるーいお湯派。
「……ホントかよ」
そんなぬるーいお湯に一緒に浸かりながら、プールのこと、改めて訊いてみた。
あんま乗り気じゃないのに無理させてもダメじゃん?
人それぞれ。
見てくれがすっげえヤンキーでも趣味が手芸の野郎がいるみたいに。俺がプール楽しそうって思っても、和臣はそう思わないのかもしれない。
「別に楽しくないから行かない、とかじゃないから」
本当か?
そう無言で確かめるように振り返った。ぴしゃん、とお湯が揺れて波打つ。
和臣はバスタブに背中を預けるように寄りかかって、その脚の間に俺が、和臣と同じ方向を向きながら陣取ってる。
俺が振り返ったら、長くなった前髪をかきあげた和臣と目が合った。
とにかく、かっけぇ。
すげぇ好き。
めちゃくちゃ好き。
だから、プール喜んでくれっかもって思ったんだ。ほぼ毎日カフェバイトも入ってるし、大変そうだからたまにはリフレッシュになるかなって。和臣が喜ぶとこが見たかったのが一番だったんだ。だからさ、行きたくないとこ無理に連れてきたくない。けど、チケットくれた京也さんにもすげぇありがとうって思うから、チケット無駄にもしたくない。せっかくくれたんだ。楽しかったっすって、お土産買ってきたい。
「プールが楽しくなさそうだから行かないって言ったわけじゃない」
「……」
「本当だよ」
そこで、優しく笑ってくれた。
「別にそういう理由で行かないって言ったんじゃないよ」
「じゃあ……」
なんでだよ。
そう訊こうとしたら和臣が身体を前に乗り出した。
「……内緒」
そっと静かにキスされて、胸がぎゅうぅって締め付けられてく。どんな些細な水音だって響くようなバスルームでさえ音のしない静かなキスは気持ち良すぎてさ。パシャパシャって、水面を飛び跳ねた魚みたいに気持ちがはしゃぐんだ。付き合えたばっかってわけでもないのに。それでも和臣とキスできるのが嬉しくてたまんない。
「っていうか、剣斗だって行く暇あるのか? 九月にあるハンドメイドのフェス出展するんだろ?」
声までかっこいいからさ。声聞くだけでもまだドキドキしたりする。特にこういうちょっといつもより低音で喋られるのが、すげぇクル。
「そーだけどさぁ」
俺を抱く時の声と同じだから。
欲情した時の和臣の声。
「そっち忙しいんだろ?」
「そーなんだけどさぁ」
確かに。すげぇ忙しい。
今、スマホが入るミニカバンを作ってる。ユニセックスで使えて、いろんなチャームも用意してさ。ミニカバンをコーデできる感じの。楽しそうじゃん。んで、そのチャームも作るから、結構時間がかかってて。今、大学の課題とかが少なくなってる夏休みだから、今だ! って頑張ってるんだけど。
「初出展、気合入れてるんだろ?」
「そーなんだけどもさぁ」
「昨日だって夜遅くまで作業してたくらい」
「昨日は中途半端だったから、キリいいとこまで進めたくて」
「プールなんて行ったら一日潰れる」
「大丈夫! 一日くらいなら」
「へぇ……」
お湯がまたちゃぷんって音を立てた。
「じゃあ、こういうこと、してる時間もある?」
「っ! ……ン」
首を傾げた和臣がもう一回キスをくれた。
「……ん」
今度は深いやつ。
「ン、ぁっ」
「……剣斗」
「あっ」
そのまま和臣の長い指が俺の後ろを撫でて、ちょっとだけ指が中に入ってくる。
「あっ……ン」
浅く後ろを撫でられて、胸がきゅぅって締め付けられる。
「こっち向いて、剣斗」
「ぁ、うんっ……あっ」
素直に向かい合わせに身体の向きを変えると、お湯に浸かっていた乳首をカプリと口に含まれる。
「……もう勃ってる」
「っ、だって」
ちょっとでも触られたらそうなるだろ。
「和臣にされるのたまんないんだよ」
ちょっとでもいじったら、そこ、そうなるくらいに和臣に色々してもらって、仕立てられたんだから
「そう? けど、この前、自分でいじってただろ? 気持ちいいって」
「そ、れはっ」
意地悪スイッチの入った和臣が、「見たい」って言ったからだろ。
奥、和臣ので突かれながら、自分で乳首いじってみてって。俺のとろとろになった前をいじるのに忙しいから、手離せないんだって、微笑みながら言ったからだ。
「自分の指でも気持ち良くなれるやらしい乳首」
「あ、あ、言うな、よっ、あぁぁぁ」
その敏感な乳首を舌でたっぷりと可愛がられて、完全に欲情した。
「あ、けど、あんま痕?」
「?」
「プールん時、に」
キスマ、胸にあったら恥ずいんじゃん。だから、そこにキスマつけるのなし、って言いたかったのに。
「あぁっ、ん、あっ」
思い切り口に含まれて、たっぷり唾液を絡められて吸われるとヤバいくらいに気持ち良すぎて、考えられなくなる。
「も、和臣っ」
「?」
もう、和臣にここもこっちも、これだって、可愛がられて、いじめられて、気持ち良くなることしか考えられなくなる。
「しよ」
これ、欲しい。
だから、水の中に手を伸ばした。
ぬるーいお湯の中でお湯よりもずっと熱いのをぎゅっと握る。
「っ」
「これ、欲しい」
もう硬くそそり勃ったそれが欲しくて、今度は自分から齧り付くようにキスをした。舌入れながら、和臣のを両手で扱いて、手の中でもっとデカくなったそれに気持ちがほろほろに蕩けてく。
「舐めたい、和臣の」
「っ」
「なぁ」
言いながら、舌で舌にしゃぶりついた。こうしたい。和臣のこの太くて硬いのをこうして舌で口ん中で気持ちくしたい。
「やらしい誘い方」
そう言って笑って、和臣が立ち上がると派手な水音を立てながらバスタブの淵に腰を下ろした。
「そんなの覚えて」
「ぁ……」
すげ、ガチガチ。
「っ、そんなに急いで男の咥えたりして」
「ン、あふ……ふ、ぅっ……ン」
「フェラの仕方なんて覚えて」
「ふっ……あむ……ン」
飛びつくようにそれを口に咥えて、唾液をたっぷり絡めながら舐めしゃぶった。口で気持ち良くしてるのは俺で気持ち良くなってるのは和臣のはずなのに。まだ十分慣らしてない後ろがウズウズしてる。早くこのガチガチのが欲しいって疼いてる。だから――。
「和臣先生に教わったんだ」
「っ」
「どこ舌で撫でると気持ちいーのかも」
だから丁寧に丁寧にやらしく舌を絡めてしゃぶった。
「喉奥もちょっと開けるようになった」
「っ」
「んむ、ン、んっ」
大丈夫。
「ン、らから、ちょーらい……これ、早く、欲しい」
うちのお湯はぬるーいから。
「ン」
長風呂でものぼせたりしないんだ。
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