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真夏のプール編 10 夢中

 更衣室にはシャワールームも個別になってるのがいくつもあった。  ドライヤーとかもちゃんと常備されてる。  そのシャワールームから直結してる更衣室は綺麗で広くて、ど真ん中には余裕で大の字で眠れそうなソファがあって。  ワクワクしてた。  まずはウォータースライダー全種類制覇しないと、て思って。  流れるプールも波のプールも行きたいって。  飯どうしようかって考えて。とにかく混んでるから昼時すごいだろうなって思って。  実際は案外すんなり買えたんだ。少しは並んだけど、回転率半端なく手早くて。店の人も繁忙期ってわかってるからか、すげぇテキパキしてた。  だから大渋滞の大行列にはならなかった。  着替えた時はワクワクして仕方がなかった場所で、今は。 「もうプールも全部入ったし」 「っ」 「ウオータースライダーも全部乗ったし」 「っ、ぁっ」  甘ったるい声が更衣室の一番奥で小さく、でも、響いた。  完全個室、じゃないんだ。顔も見えないし、着替えてる様子は見えなくなってるけど、床から十センチくらいは開いてるから、足元だけは見えるようになってる。だから更衣室のブースの中に何人入ってるのかくらいなら、床から覗き込める。  見ようと思えば、一番奥の一番誰も来なそうな一角で、男二人が入ってるって、わかる。 「剣斗」 「ん……ンン」  男二人で入っていて、キス、してるって。 「っ、あっ、乳首、やばいっ」  乳首、可愛がられたくてたまらないって、疼いてるって。 「っ、はぁっ」  まだ、更衣室には俺と和臣しかいない。そりゃ、まだこの時間じゃ帰るのもったいないだろって時間帯。けど、ナイトチケットの人たちはもうあと二時間くらい後からじゃないと入場できないから。更衣室だけが閑散としてる。  けど、プールにはまだ数え切れない人がいて。いつ誰かがここに入ってくるのかわかんない。 「やらしい……あえてこれ買った?」 「違っ」 「乳首、感じてるの丸わかり」 「っ、あっ、和臣、がっ、いじったからっ、だろっ」  それに今日一日、ずっと、思ってた。 「あ、和臣っ」  俺のだ、って。  誰かが和臣のこと見るたんびに、俺の彼氏って。 「和臣」  思ってた。  こいつとキスもセックスもしていいのは俺だけって。 「っ」  向かい合って、俺は壁に背中を預けるようにしながら、腰だけ突き出してる。和臣の硬いのと自分のを擦り合わせるようにしながら、和臣にラッシュガード越しでもわかるくらいに感じて、ピンって、勃ってるのがわかる乳首を差し出してる。 「やらしい顔してる」 「は、ぁぁっ」  爪で、勃った乳首を弾かれただけで身体が跳ねた。 「あ、もっと、あ、はぁっ」  両掌がその感じてる乳首の硬さを確かめるみたいに腹から脇腹、それから胸をゆっくり撫でていく。その掌がなだらかで平坦な身体のラインで唯一一箇所、硬く、突起してる乳首を撫でただけで、頭の芯が熱に溶けそう。 「ねぇ」ってねだるみたいに乳首をどうにかあの手に可愛がられることしか考えられなくなる。 「もっと、抓って欲し」  思わず溢れた懇願の言葉に和臣が小さく笑って、首を傾げた。まだ濡れてる髪が色っぽくて、見惚れてると、キスをくれる。 「ふぅっ……」  キスが濃くて、気持ちいい。  舌を絡めてもらえるとたまらない  水じゃ出せない濃厚な音を立てながら、舌同士を絡め合って、唇を交わして、熱をキスで混ぜてく。角度を変えて、深く、濃く、けど、絶妙に俺のこと煽る和臣のキスにのぼせてく。 「剣斗」 「ぁ……っっっっっ」  名前を呼ばれた瞬間、唇は触れ合ってるけど、キスじゃなくて、解かれた舌先を、まだもっと和臣の舌に可愛がられたいって伸ばした瞬間、乳首をきつく抓られた。 「っ、あっ、それっ」  気持ちいいって言おうとした声ごとキスで食われて、とろけてく。タイミングをずらされた濃厚なキスに舌先が痺れる。 「あっ」 「すごいな……水着の中、ドロドロ」 「あ、はぁっ」  海パンの中に忍び込んだ手に前を握られた。 「熱、すごいよ? 剣斗の」 「あ、だって、も」 「波のプールからだもんな」 「あ、あ、あ、手、気持ちい」  手に夢中になってる。 「和臣の、もっ」 「っ」  もう、この手に可愛がってもらうことしか考えてない。  もう、和臣のを気持ち良くすることしか考えてない。 「剣斗っ」 「あ、和臣のも、すげぇ、けど?」 「そりゃ」  やば。 「俺は今日一日ずっと我慢してたから」  欲しい。 「剣斗のこれ、やらしすぎて」  和臣の、欲しくて、おかしくなりそう。 「一日中、考えてた」 「っ」  和臣のと、自分のを両手でくっつけて、握って、お互いの熱の高さにのぼせそうになりながら今欲しくてたまらない和臣のことを見つめた。 「このラッシュガードで見えない素肌にキスマークがいくつもついてるって」 「あっ」  捲り上げられて、ピン勃ちした乳首をそのラッシュガードで引っ掻かれても感じるんだ。 「誰にも見えない場所にもいくつも……」  海パンをもっとしっかりと引き下ろされて、下腹部についたキスマークに、とろりと先走りが落っこちた。 「セックスの痕が残ってるって」 「あ、和臣っ」 「一日中、考えてた」  もう。 「やらしいことばっかり、考えてたよ」  俺は、今、和臣に抱いてもらうことしか、考えてないよ。

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