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 弥兵衛が新たな自分を知り、衝撃を受けるのも束の間、見回りをしている目明かしがその場へやって来た。  息絶えたふたつの遺体に真っ赤な血で染まった刀を持つ男。これでは目の前にいる浅治郎が犯人だと告げているようなものだ。彼が人を斬る場面をもっと見たいと思った弥兵衛は焦り、目明かしと浅治郎の前まで踏み出すと、彼は自分の用心棒で、人斬りと出会し今まさに一太刀浴びせたところで逃げられたのだと偽った。  仏の弥兵衛として知られている弥兵衛がまさか人斬りを匿うことはないだろう。そう踏んだ目明かしは疑いもせず、気を付けるようにと注意を促し去っていった。  そういうことから弥兵衛は浅治郎を用心棒として傍に置き、浅治郎とこのような身体の関係に縺れたのだ。浅治郎もまた、弥兵衛という大きな隠れ蓑を得ることができ、快楽も感じることができて一石二鳥とでも思ったのか、夜皆が寝付く頃には自ら身体を開き、こうして弥兵衛の下で乱れるのだった。

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