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 ◆  ――それにしても、と弥兵衛は思う。抱かれている姿も美しいが、人を斬る時の姿もまた美しい。  どんよりと漆黒に染まった眼を見開き、赤い唇に浮かぶ笑みはなんともおぞましく、邪悪に満ちている。  細い腕が一人の若い侍の喉元を掴む。若侍は浅治郎よりも大柄であるにもかかわらず反撃を受けないのはなかなか大したものだと、弥兵衛は感嘆する。  そうやって弥兵衛が見惚れている間にも若侍の顔面は蒼白し、血の気が失せてくる。浅治郎はその顔を見るのが好きなようだ。紅も引いていないというのにまるで血に染まったほどの赤い唇を舌先で舐め、にやりと笑う。  血走ったその目に明かりさえも宿さない黒い眼が苦しみ藻掻く若侍をじいっと見つめている。  殺しの現場だというのに、弥兵衛の心中ではおかしなことに、浅治郎にそこまで見つめられている若侍に少しばかりの嫉妬心が芽生えていた。  瞬きさえもすることなく、見つめられるなんてなんと羨ましいことだろうかと。

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