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第16話

それからの授業は最悪だった。 教科書が届くのがまだ少し先だという風早がまた昨日のように隣に座り、俺の教科書を覗き込むし、時節こちらに振り向く楓や海の視線も気になるし、というか一番落ち着かないのは風早が近くにいることなのだ。 「幸どうしたの?さっきからソワソワしてる」 「してないっ、お前は黙ってろっ」 実際ソワソワしているのは自分でも分かっていたので、悟られたのが少し悔しい。というか、昨日あんなこと言っておいてこんなに普通でいられる風早はすごいと思う。 ソワソワしたまま授業は終わる。先生の話は全く覚えていない。 部活があるので部室に行こうとした時だった。 「あ、待って幸」 がしっと腕を掴まれて、そのままトイレへと連行される。途中また海と目があって、冷や汗が流れる。 「ちょっ、風早っ、何してっ」 有無を言わさず俺は風早にトイレの個室に押し込まれた。 デジャヴだ、またこの個室に戻ってくるとは・・・。 「ね、海って誰?」 昨日のように、風早は素早くトイレの鍵を閉めて俺に迫ってくる。 顔が近い。ふわりと柑橘系のコロンの香りが鼻を掠める。 「誰っていうか・・・、幼馴染・・・」 「それだけ?ほんとに?」 「それ以外に何が・・・」 すると、風早がもっと顔を近づけてきて、耳をはむっと噛んできた。 「んっ・・・」 上擦った声が出て、俺は慌てて口を抑える。鼻を掠めていた風早の香りがより濃くなった。 「・・・早く俺のもんにしたい。だめ?」 「だめっていうか・・・」 はっきりと断れない俺も俺だ。首を横にも縦にも振れなくて、固まっていると風早がそんな俺の頬を撫でてくる。 「だめ・・・?」 「だめじゃな・・・」 「幸先輩〜!先輩!?」 突然トイレの外から俺を呼ぶ声。 っていうか待て待て待て、俺今何言おうとした!?だめじゃない?だめに決まってる!!! 「今度は誰・・・?」 「俺の後輩・・・」

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