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第15話
「海っ!!」
きっとまだ変な誤解をしたままであろう海を追いかけて教室へと入る。海は涼しい顔で本を読んだまま俺のことを無視している。
「なぁ、海っ」
海の机の前に歩み、持っている本をとりあげるとようやく海がこちらを向いた。眉の皺が一段と濃い。今日の海はいつもより不機嫌だ。
「何」
「いや、あのだな・・・。お前変な勘違いしてるだろ」
「・・・してない」
本を返せと俺の腕を叩く海が俺を睨みつけるようにいて言う。
「してるってっ!大体俺と風早は本当にそんな関係じゃなくてっ」
弁解をしようとしているのに、全然話を聞いてくれない海に焦りを感じる俺に誰かがぶつかってきた。
「さっちゃん~~昨日はどうしたの~~?」
次は誰だ、と隣を向くと楽しそうに笑みを浮かべた楓がそこにはいた。
「楓・・・」
「私お姫様抱っこなんて初めて生で見たかも・・・、小日向くん結構ガッシリしてるから抱かれ心地も最高そうだし・・・」
いいなぁ、と頬を赤く染める楓に俺は呆れて声も出ない。
「それに、さっちゃん昨日なんか様子変だったし、何かあったでしょ」
「幸は小日向ってやつと昨日はお盛んだったみたいだぞ」
海、お前はなんてことを言ってくれるんだ。
ないないないない、と答えても楓は俺の方すら向いてくれない。
「何それほんとに?詳しく聞きた~い」
「俺も詳しく聞きたいと思っていたところだ、なぁ?幸」
「・・・ひっ」
ぐいぐいと二人に追い詰められて、何からどう話そうと考える。
だが、どこからどう話しても俺の乳首の話はまずできないし、というかトイレで会った話もだめ。それに、教室で何をされたのかっていう話もできないし、ましてや保健室での出来事も話せない。
何も話せることがないじゃないかっ!!俺にどうしろとっ!!
助けを求めようとしても、ここには風早はいない。まず風早に助けを求めるのは間違っている気がする。
「さっちゃんは何を隠しているのかなぁ?大丈夫っ!もし、さっちゃんが宇宙人でも信じるよっ!!」
楓、俺宇宙人だったっていう真実の方がまだ幾分かマシだったよ・・・。
「俺も別に幸が実はゴキブリでも信じるぞ」
いや、ゴキブリ・・・まぁでも乳首の話をするよりかは少しだけマシかもしれない・・・。
「いやいやいやっ!二人ともなんか楽しんでるだろっ!!昨日はただ少し風邪気味だったっていうか・・・、ちょっとおかしかっただけっ!それだけ!それ以外は一切ないっ!」
「えぇ~、つまんない」
「つまらないな」
むすっと顔を顰めた二人に俺はつまらなくて結構だと言い放つ。
「まぁいいや、さっちゃんのお姉ちゃんに聞けば済む話だし」
「それもそうだね~」
「お前らっ!人の話を聞けっ!!」
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