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第22話

風早の家はマンションの六階の角部屋。両親は海外出張でおらず、兄も今は家を出ているらしい。実質一人暮らしと変わらない風早は、家事も完璧にこなす。 「さ、上がって」 ドアを開けて、電気をつけた風早は俺の手を取ってそう言った。小さくお邪魔します、と呟いてから靴を脱いで家に入った。 「散らかっててごめんね、適当にそこ座ってて」 散らかってて、と風早は言うが机の上に紙が数枚置いてあるくらいで床には何一つ置いていない。これが風早にとっては散らかっているというのか、とか思いながら俺はそろそろとソファに腰掛ける。 大分俺も落ち着いてきていて、涙も止まった。まだ鼻が赤いのが少し恥ずかしい。 「ココア飲む?」 キッチンから風早が顔を出して言った。俺はコクコクと頷いて、手伝おうと立ち上がったが、風早に座っててと止められてしまった。仕方がないので、俺は大人しくソファで座っていることにする。 ぐるり、と周りを見回すと風早の質素な部屋が見える。家具はほとんど黒か白に統一されていて、まるでモデルルームのような部屋だ。よく見れば、隅に段ボールが積まれているのが見えて、そういえば風早が引っ越してきたことを思い出す。 「引っ越して時間経ったのにまだ段ボール全部開けられてないんだよね・・・。お陰で俺のお気に入りの物がまだ見つかってないんだよ」 「お気に入りの物・・・?」 「そ、お気に入りの物」 そう言って風早が温かいココアを渡してくれた。 聞いても答えてくれなさそうなので、ふーんと言いながらココアを受け取って少しずつ飲む。 「幸って猫舌?」 「うん・・・」 「やっぱり、幸って猫っぽいもんね」 ほらあのシャツみたいにさ、と笑う風早は淹れたての熱いココアを臆さず飲んだ。 「ね、幸・・・。聞いてもいい?」 ココアをテーブルに置き、風早が俺の隣に腰掛けた。俺が少しどくと、風早が抱き付いてくる。 「何が・・・」 別に嫌でもなくて、突っぱねることもしないでそのまま風早の好きなようにさせていると、風早は俺のズボンに手を掛けた。 「ここ、反応してるから」

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