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第23話
痴漢に触られて感じちゃったの・・・?
耳元でそう囁かれて、背筋がぞくっとした。
風早に言われるまで、気が付かなかった。
「んな訳・・・ないだろ・・・」
「幸のお姉さんに聞いたんだよ、六年前から幸が急に電車を嫌がるようになったって。年上の男の人も苦手なのも」
「なんで・・・知って・・・」
「お姉さん、悲しんでたよ?どうして今まで相談してくれなかったのかって」
そのまま風早に流されるように、痴漢に遭ったことやそれから乳首が敏感になったこと、など今まで人に話したことのないことまで話してしまった。
その間、風早は嫌な顔一つすることなく静かに聞いてくれた。時々言葉に詰まっても、風早は俺が次の言葉を発するまでゆっくりと待ってくれたので俺も自分のペースで話すことが出来た。
「そっか・・・、今までよく頑張ったね」
くしゃくしゃと頭を撫でられて、また視界が滲んだ。
風早は気持ちが悪いと言って俺から距離を置こうとはしない。それが一番嬉しかったのだ。
多分、スッキリしたんだと思う。今までひた隠しにしていた黒いモヤみたいなのが、すっと晴れた気がした。
「俺はどんな幸も好きだよ、別に幸が宇宙人でも好き」
以前楓に言われた言葉。聞いてたのか、と呟くと風早はうん、と頷いた。
「だって幸俺以外と楽しそうに話すんだもん、俺嫉妬しちゃう」
「・・・俺は別にお前がゴキブリでもいいと思う・・・」
目をまん丸にして、驚いた風早がそのまま俺の頭を抱く。また俺の涙が風早の服を汚した。
「えっ!じゃぁ俺は幸がうんこでも好きぃ~」
「うんこって・・・」
「じゃぁ、乳首ぃ~」
「・・・それは嫌だ」
拗ねたフリをして、風早から離れてやる。すると、風早はニヤニヤしながらまたこちらを見てきた。
「ほんとに?乳首嫌なの?」
「・・・なんだよ」
ジリジリと寄ってくる風早を手で押しのけて、ソファから立ち上がろうとすると後ろからがばっと抱き付かれた。
「幸、確保しましたっ!ベッドへ連行します!!」
風早はそう言って、俺を抱き上げてそのままベッドへ向かう。
「何すんだよっ!!」
「俺が幸のいやーな記憶を上書きしてあげるのっ!」
・・・嫌な予感しかしない。
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