31 / 155

第31話

どうしてこうなった・・・。 「あ、桐原幸って人だ」 いきなりガラッと音を立てて入ってきた男は俺を指差してそう言った。少し着崩された制服、顔はとても整っていて、少し風早に似ている。 あれ・・・この人ってもしかして。 思わず首を傾げると、彼は鹿山三保だと名乗った。 待てよ、鹿山三保って聞いたことあるぞ・・・。やっぱりこの人横井先生の例の恋人なんじゃ・・・。 「保健室の王子様・・・」 しまった、声にだしてしまった。慌てて口を閉 じると、鹿山先輩が大きな声で笑い出した。 「あっはっはは、そっか王子様なんてあだ名つ けられたんだっけ?似あわねぇ・・・」 「いや、でも俺がそう呼ばれるようになったのは三保のせいだけどね??」 「そんなこと言われても俺ただ貧血気味なだけだし」 付き合っているだけあって二人は相当仲が良く、俺が会話に入ることができずにいると鹿山先輩が俺の方を向いた。 「そういえば、幸はあいつの恋人なんだって?あいつもこんな純粋無垢そうな子よく捕まえたねぇ」 恋人、その響きに思わずびくりと反応してしまった。 「えっ、いやっ、恋人とかそういうんじゃなくて・・・」 必死で弁解すると、鹿山先輩はえ?と驚いた顔でこちらを見た。 「恋人じゃないの?まさかあいつがフられるとは・・・」 「い、いや、別にフってもいないというか」 言葉を濁し、だんだん語尾が小さくなって行く俺を鹿山先輩が静かに見つめてくる。俺はその視線に、思わず背筋を伸ばした。 「風早のこと・・・きらい?」 「三保、あんまり彼らのことに首を突っ込まない方がいいんじゃ・・・」 「いいの、翔太は黙ってて。それに、幸困ってるみたいだし・・・、翔太が俺のためにハンバーグ作ってくれるのを教えてくれるんだったらお礼に悩み相談でもしようかなって」 って、横井先生がハンバーグをリクエストしたのってもしかして鹿山先輩が言ったからなのかっ!? まぁ、でも同じ男同士で付き合っている二人なら俺の話もちゃんと親身になって聞いてくれるかもしれない。俺はそう思って、風早と出会ってからのことを少しずつ話しだした。 もちろん、俺の乳首の話とか授業中触れられた、とかそういうことは言っていない。でも、途中で鹿山先輩がニヤニヤしていたからバレていたのかも・・・? 「それさぁ、絶対風早のこと好きだと思う」

ともだちにシェアしよう!