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第32話

一通り話し終えると、すぐに鹿山先輩がそう言った。俺はまさかの返答に何も言えずただ口を開けたまま鹿山先輩をぽかんと見つめた。 「まず、即答で嫌って言わない時点で男同士にそこまで嫌悪感はないんでしょ?それに、風早をすごい意識してるみたいだし・・・。ほんとは風早のこと好きなんじゃないの?」 「で、でもあいつと俺は男同士で・・・」 「男同士だから、何?俺らも男同士だけど、気持ち悪いって思う?」 鹿山先輩はそう言って、強引に横井先生は引き寄せて言った。鹿山先輩が軽くちゅっと横井先生の頰にキスを落とすと、横井先生は少し顔を赤らめた。 「お、思いません・・・」 むしろ、ステキだと思った。お互いのことをちゃんお分かり合っているというか・・・。 「だったら付き合えばいいのに。ほんとは好きだろ?」 "だったら付き合えばいいのに"その言葉がすとん、と俺の心に落ちた気がした。 「・・・す、好きで・・・」 好きです、と頷こうと思ったその時だった。 「戻りました!今日ミンチめっちゃ安かったですよ」 ガラララ、と音を立てて樹たちが満面の笑みで帰って来たのだ。 「おっ、おっ、おかえりっ!」 顔は赤くなったままじゃないだろうか。俺はすぐさま頰を触って確かめる。少し熱いが、バレる程ではないだろう。 樹はそんな俺の様子を気にすることもなく、冷蔵庫に買って来たものを仕舞う。那智は俺を見て少し傾げたようだった。 「じゃ、まあま頑張れよ〜。あいつ、もう少しでサッカーの試合出るらしいし」 ひらひらと手を振った鹿山先輩が、颯爽と調理室を後にする。 「・・・新入部員ですか?」 那智の声に、思わずはっと顔を上げる。 「い、いや・・・味見係・・・?」 俺はやっぱり言い訳が下手だ。

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