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第34話
瞼をこすって、目の前の人物に目を向ける。海もサッカー部のはずだ、もう練習は終わったのだろうか。
「何してんだ、こんなところで。あったかいからって風邪ひくぞ」
「ちょっと人を待ってて・・・」
キョロキョロと辺りを見回しても人がいない。空はもう暗く、日は落ちてしまっていたようだった。
「人・・・?あぁ、もしかしてあいつか」
俺が風早のことを待っていることなんて海にはとっくにバレているらしい。
やっぱり、海は風早の話になると少し不機嫌になる。同じ部活で一緒にいるので仲良くなったのだと思っていたが、違うらしかった。
「用事?」
「え、あぁ、うんまぁ・・・」
曖昧に返事を濁すと海の表情がみるみるとしかめっ面になる。
「幸最近変だよな」
「・・・そうか?」
「最近ずっとあいつのこと見てるだろ」
「えっ!?そんなことねぇよっ!?」
自覚はあった。席が近いというのもあるが、風早とつるむことが多かったし、視界に入ると無意識に目で追っていたこともあった。まさか、海にバレているとは思わなかったけど。
「そんなことあるだろ、幸って男の人苦手じゃなかったのか?」
「なんで・・・?」
「特に年上の人が近くに来ると縮こまってること多いし、あと電車も苦手だろ。お前の姉ちゃんが言ってたぞ」
海にまで話が及んでいるとは思ってもみなかった。俺は必死に頭を動かして、何か良い言い訳を考える。
「小さい時にちょっと色々あって・・・」
ってだめだ、俺本当のこと言っちゃってるっ!!全然誤魔化せてないっ!!
急いで訂正しようとするが、既に海が口を開いていた。
「やっぱりあれか、お前痴漢にあったんだろ」
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