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第37話
今度は、深く貪るようなキスをされる。唇を小さく噛まれ、俺は思わず痛みに顔を顰めた。
何をしているのだろう。
まるで、他人事のように考える。
ただ、風早とは違うキスに俺は少しの違和感を感じた。
キスに慣れてしまったのか、それとも本当に嫌がってないのか。
自分のことなのに、自分が一番分かっているはずなのに、何もわからない。そんな恐怖が俺を襲う。
「意外、嫌がらないんだ」
口の端に垂れたよだれを海が腕で拭った。その仕草が色っぽくて直視できない。今までずっと一緒にいたのに知らない海の姿。
「い、嫌に・・・決まってんだろ・・・」
何で俺こんなにドキドキしてんだろ。静まらない鼓動を感じ、俺は考える。全力疾走した後みたいな、そんな風に早い鼓動を胸に手を置いて、静まれ静まれ、と言い聞かせる。
しかし、鼓動は思ったよりも言うことを聞かない子らしく、なかなか静まってはくれない。
「嫌?そのくせして、気持ち良さそうな顔してたけど」
海がそう言って俺の手をとって、グラウンドの茂みが深い所へ連れて行った。周りからはあまり見えない場所。ここに来てしまったら、俺は風早のことを・・・。
「なぁ、海・・・か、帰ろう?練習でちょっと疲れてるだけだろ・・・」
俺の手を掴む海の力がぎゅうっと強くなる。俺は振り払おうと腕を動かすが、放してはくれなかった。
「疲れてる?幸は俺が疲れてるからこういうことしてるって思ってるの?」
「えと・・・、でもお前変だよ」
「俺はお前が好きなだけ。好きな子にキスしたいって気持ちは別に変でもなんでもないだろ」
さらっとそう言い放った海が、俺のシャツに手を掛けた。もう何が何だかわからなくて、ぼーっとしているといつの間にかシャツのボタンを全て外されていた。
「ゃっ・・・」
シャツのボタンが全て外されていることに気づいた俺はすぐに一歩下がる。シャツをまた止め直そうとすると視界に別の人物が入ってきた。
「あれ、幸?何してんの?」
「・・・なんで・・・、風早・・・」
茂みをかき分けて現れたのは、俺が会いたかった人。でも、こんな姿じゃ・・・。誤解されてしまう。
「俺は顧問と話し合ってただけ・・・ここ通った方が近道だし・・・」
風早がそう言って俺の姿をジロジロと見つめてくる。シャツは全て外されていて、風で靡くシャツの隙間から絆創膏が見え隠れした。
「幸は、何してんの?」
「いや・・・、その・・・」
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