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第39話
そんな言い方は狡すぎる。俺はしゃがんだまま、何も言わずただ目の前にいる海を見つめた。
同情なのか、否なのか。
結論から言うと、俺は拒めなかった。
俺は酷い奴だ。風早がいなくなった瞬間、海となんて。嫌悪感に押しつぶされてしまいそうだった。
首元をねっとりと舐められて、俺は思わずくすぐったくて肩を竦めた。目を瞑ると、風早のあの顔が浮かぶ。それが辛くて、目を開けると海の姿。海に、こんなことされている自分が見える。
そのまま、海の舌は胸にある真っ赤な二つの飾りに向かう。舐められたせいで絆創膏が皮膚から剥がれる。
「んっ、やっ・・・」
ぬる、と温かい口内の感触がした。すると、強烈な快感が俺を襲う。反射的に、勃ってしまうそれを俺は手で押さえる。
「んんんっ・・・・、んぁっ・・・」
押さえきれない喘ぎ声がグラウンドに響いた。
「ねぇ、俺と付き合ってよ・・・」
海の言葉に、風早の言葉が重なって聞こえた。
明日からやっぱり俺らは友達のまま?かっわいい、幸ほんと可愛い・・。
やっぱり、こんなのだめだ。俺は風早が好き。海とは付き合えない。
今から追いかけたら間に合うかな。そしたら気持ちをちゃんと伝えよう。
「か、える・・・」
ぼそっとそう呟いて、俺は海の肩を掴んで自分の体から放した。海も、突然のことに対応できなかったらしい。
「幸・・・?」
「俺は、風早が好き・・・。ごめん、海。やっぱり俺・・・」
お前とは付き合えない。
小さく呟いたつもりだったが、海には聞こえたようだ。俺はそれを確認して、風早が消えた方向へと走り出した。
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