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第40話

「風早ーっ!!!」 いない。かなり走ったつもりだが、それらしき姿が見えない。俺は目を凝らして辺りを見回すが、人ひとり見つからない。 「風早っ!!!!」 名を叫んでも、どうしたの?と声を掛けてくれる人がいない。 風早の家に行ってしまおうか、俺はすぐにそう決心して歩む方向を変える。早足で風早の家を目指す。人影が見える度、風早かと期待するが全て外れてしまう。俺は焦りが積もって、走り始めた。 誤解を解かなきゃ、その一心だった。 風早の家の前に着いて、すぐにチャイムを押した。けれど、五分待っても誰も現れない。もう一度チャイムを押すが結果は同じだった。もう暗いのに、電気が付いてもいないのでもしかしたらいないのかも知れない。 ・・・まさか、いないフリをしているとは思いたくもないし。 家に帰っていないのならば、帰ってくるまで待つだけだ。俺は姉ちゃんにメールで帰るの少し遅くなるかもとだけ送って、風早の家の傍に座り込んだ。 「あれ、幸・・・?」 やっと、会える、と名前を呼ばれて顔をあげるとそこには鹿山先輩がいた。明らかに、お目当ての人じゃなかった顔をしていたのか、鹿山先輩は俺を見て少し笑う。 「風早じゃなくてごめんな、こんな所で何してんの?」 「・・・風早を待ってます」 「あいつ今日は帰って来ねぇよ、本家からお呼び出しだから」 「本家?」 「あいつのばばあが風早のことお気に入りなの。病気であまり家からも出れないから、毎月お呼び出ししてるって訳」 俺はまぁお呼び出しされたことないけどね、と鹿山先輩はどうでもいいことのように呟いた。 「えっと・・・」 「だから、今日は俺の家に来な??翔太もいるよ、また話聞いてあげる」 鹿山先輩は無理やり俺の手をとってそのまま歩き出した。数分歩かないうちに、車が停められているのが見えた。 「あれ翔太の車ね。俺は赤が良いって言ったのに白買ったんだよなー、汚れるって言ったのに」 不満そうに口を窄める鹿山先輩。でも少し楽しそうだった。 「乗って」 後部席の扉を開いた鹿山先輩は俺に入るように促した。逃げられないと悟った俺は大人しく車に乗り込んだ。 今は、少し人に話を聞いてもらいたいのかも知れない。

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