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第46話

頭がもやもやしたまま時間は過ぎた。風早は俺に話しかけては来ない。俺も俺で話しかけられずにいて、気がつけば話さなくなって約一週間。 海も海で風早とはうまくいっていないらしい。サッカーの練習中に風早と口論になっているところを何度か見かけた。 料理部ではやっと差し入れに何を作るかが決まって、みんなで試作品も作った。 スポーツドリンクを混ぜたゼリーを作ろうと言い出したのは横井先生で、何でも鹿山先輩の差し金らしかった。 「風早くんはゼリーが好きらしいよ?」 小声でそう耳打ちしてくれた横井先生に俺はへぇ、とあまり興味ないフリをしておいた。 ゼリーの出来は上々だ。元々ゼリーを作るのはそこまで難しい訳でもないし、失敗するところもない。横井先生は何やら材料に泡吹かせてたけど。 明日に迫ったサッカー部の試合。勝ち進んで行けば県大会、全国大会へと駒を進めることのできる大きな試合だ。 樹も気合が入っているのか、部員は12人程度しかいないのにゼリーを25個も作っていた。 「幸先輩も、例のお友達にとっておきのゼリー作ったらどうですか?」 樹が材料を混ぜ合わせている横で、那智がそっと俺に声をかけた。 「え、とっておきって・・・」 その例のお友達と俺の関係を樹だけでなく、どうやら那智も知っているらしい。とぼけても無駄かな、と思ったので真面目に返事することにした。 「残念ながら、とっておきのゼリーを作ってもあいつが食べてくれるとは限らねぇよ・・・」 自分で言っていて少し悲しかったが、きっと事実だ。 「いいからいいから、作りましょうよ!僕も手伝います!」 那智がそう言って腕まくりをして、エプロンを身につける。 「え、いやいいよ!別にそんなんじゃないし・・・」 「だめです!絶対後悔します!ほら!」 ボウルを那智に手渡され、渋々受け取ると後ろから横井先生がひょっこり顔を出した。 さっき失敗していたから見ているだけで良いって言ったのを少し気にしているらしく、表情が暗い。 「風早くんいちご好きなんだってさ、可愛いよね」 横井先生のその言葉に那智が瞳をキラキラさせる。 「僕、いちご買ってきます!!」 大急ぎで今度はエプロンを脱ぎ捨て、財布を手に取り調理室から出て行く那智を見て俺は大きなため息を一つ。 明日は待ちに待った試合当日だ。俺は本当に、やれるのだろうか・・・。 心の中は不安しかなかった。

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