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第49話
「・・・幸先輩?」
しばらくぼーっと立っていた俺に那智が後ろから声をかけた。
「え、あぁ、ごめん。行こうか」
心配そうに俺を見つめる那智に、俺は精一杯の笑みを見せる。さっきの風早とのやり取りを見ていたのだろうか。
会場に戻ると、先ほどの熱気を上回る盛り上がりを見せていた。俺はあんまりサッカーに詳しくはないが、どこかの高校のサッカー部に有名人がいるようだ。
「あ、栗原くんだ!やば、超かっこいいんだけど・・・」
「ほんとだ!栗原くんと同じ高校の子羨ましいなぁ」
「わかる〜!」
女子たちが固まってキャーキャー悲鳴を上げているのを横目に、前に栗原という名を聞いたことある気がすると首を傾げた。
「あっ、もうちょっとで始まるみたいですよ!」
樹が興奮して、瞳をキラキラさせながら言う。
「そうだな、精一杯応援してやろう」
「はいっ!」
試合はトーナメント戦で、俺たちの高校は順調に勝ち進んで行った。途中で樹が興奮のあまり足を踏み外したり、那智の声が枯れてしまったり、色々あったが俺たちは楽しく試合の観戦ができた。
何より、風早がシュートを決めた瞬間の高揚感は凄まじく、俺も声が枯れるまで応援した。
そして、準決勝。相手は冬の大会で全国大会まで勝ち進んだ強豪校だった。
俺たちは息をのんでその試合をただ見つめる。
一点と点を取られ、取り返しの繰り返し。試合の応援も最高潮に達し、風早にボールが回った時だった。
俺の席からは、風早が相手とぶつかったところだけが見えた。
あとは、選手が揉みくちゃになって・・・。
審判が慌てて止めに入り、救急隊員がそばへ駆け寄って行く。
「風早・・・っ!!」
観覧席から身を乗り出して、必死に見つめると横たわっている風早の姿が見えた。担架に乗せられて、風早はすぐに運ばれて行った。
「な、何が起こったんですか・・・っ!?」
樹もすぐ近くで身を乗り出していたが、あまり見えなかったようで焦ったようにキョロキョロとしている。
「か、風早が・・・っ」
どうしたらいいか分からず、あたふたとしているとポンと横井先生に肩を叩かれた。
「早く行ってあげて」
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