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第50話
結果的に風早は無事だった。
他の選手とぶつかって、軽い脳震盪を起こしただけなので命に別状はないし、特に後遺症も残らないと医者は言っていた。
でも、次の試合に出ることは不可能だと言われ、選手の足りなくなってしまったサッカー部は、棄権せざるを得なくなってしまった。
俺が、あの後すぐに風早の休む救護スペースへと向かったが関係者以外立ち入り禁止だと言われてしまい、入れなかったのだ。中に、何人かの部員が見えて外からしか様子の伺えない自分がむなしかった。
結局、持ってきたゼリーも渡すことのできないままその日は過ぎた。帰ってから、姉ちゃんに色々と聞かれたが、答える気力もなく俺は一人部屋に戻る。
あっという間の一日だった。
俺はベッドに横になって、何気なく携帯を見れば海からメールが届いていた。
「今日は応援ありがとう。風早のこと心配だと思うなら、今からでも会いに行ってやれ。あいつなら今、学校の裏の病院で一日だけ様子見の入院をしているはずだ」
俺は、そのメールを見て飛び起きた。
すぐに着替え、冷蔵庫に入っているゼリーを鞄に突っ込んで家から飛び出した。お風呂上りで髪の毛が少し湿っていたが、気にしている暇じゃない。
続けて、海から風早の病室番号と思われるメールも届いた。
俺は夜の道を必死に走る。汗でべたついて気持ちが悪い。
数分走ると、学校が見えてきた。俺はすぐさま裏に周り、病院の中の様子を確認する。ただいま夜の十時を過ぎた所だ。入口は既に暗く、鍵もかかっているらしかった。
だが、緊急用の扉だけ不自然に開いていたので、そこからなら楽々に入り込めることが出来た。
もうちょっとで風早に会える。ちゃんと、面と向かって話すことができる。
三○五、それが風早の病室だ。人気のない廊下を静かに歩み、目的地の前で深呼吸をする。海の情報が正しければ、この中にいるはずだ。
俺は、病室の扉に手を掛けた。
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