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第52話
「俺は・・・、風早が、好き・・・」
必死に絞り出してそれだけ言った。恥ずかしくて、風早の方を見ることができない。
「さ、幸が・・・俺のこと、好き?」
ロボットのようにそう復唱した風早は思考が回っていないようだ。恐る恐る風早を見ると、ぽかんと口を間抜けに開けたまま固まっていた。
「うん」
「ほんとに?」
「嘘でこんなこと言うかよ」
「ほんとに?」
「だからっ、本当だって!」
「え、でも・・・」
風早の口がまだ塞がらない。俺は呆れて、手で風早の顎を押し上げてやる。
ついでにキスも・・・。
「んっ、・・・これで信じたか?」
「さ、幸が自分から・・・キスを・・・っ」
「うん、だからお前のことが好きだって」
ああぁ、と言葉にならない声をあげた風早が急に頬を真っ赤に染める。こんなに暗いのにはっきりと分かるくらい頬を染めた風早は、両手で顔を覆う。
あれだけ風早に気持ちを伝えるのを渋っていたのに、俺ってばどうしてしまったんだろう。風早のせいで調子が狂う。
「幸から、キス貰った・・・」
「初めてじゃないだろ」
「でも俺が言わないとしてくれないじゃん、でもでも、今日は・・・」
指の隙間からこちらの様子を伺う風早。
やばい、風早なのに可愛い、風早なのに。
「俺・・・嬉しい、ほんとに、人生で一番嬉しい・・・」
「大げさだな・・・」
「ほんとだよ、ほんと。俺今なら幸から貰った幸せでおにぎり作れるもん、ほんとに」
「幸せのおにぎりってなんだよ・・・」
風早の変な表現に苦笑すると、風早は至って真面目に言う。
「おにぎりはおにぎりっ!幸せが詰まったおにぎり!」
「あぁ、はいはい。わかった」
「わかってないでしょ!もー、幸ってば・・・、でも本当に俺嬉しい」
風早に見つめられてドクドク、とまた心臓が鳴り出す。俺は逸らすこともできずに、そのまま風早の綺麗な目を見つめる。雲が晴れて月光が強く病室に注がれる。カーテンが風でなびいているのがゆっくりに見えた。
「俺も幸が好き、愛してる」
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