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第一章 幸の秘密 完結

朝目が覚めると、隣に風早がいる。小さなことだけれど、俺にとっては大きな幸せだ。恥ずかしいからそんなことは言わないが、俺は身じろいで風早にくっついた。 「ん、幸・・・起きたの?」 頭上から風早のくぐごもった声が聞こえた。薄っすら目を開くと風早と目が合う。 「うん、おはよう・・・」 目を擦ると、おでこにキスが降ってくる。終いにはぺろりとおでこを舐められて、俺はくすぐったくて風早の胸板を押した。 「ちょっと・・・、くすぐったい」 「幸っておでこも甘いよね」 「どういうことだっ」 「・・・、乳首もね?」 くふっと小さく笑う風早が眩しい。 あぁ、俺はこいつが本当に好きなんだと感じる。 ぐりぐり、と舐められたおでこを風早の胸に押し付けるとひどいと頭上から声がした。 「あ、幸。今度俺とデートしよう?」 「・・・デート?」 「そ、デートっ!したことないし、俺幸と遊びに行きたいっ」 えーと、遊園地もいいけど動物園もいいなぁ、映画も見に行きたいかも・・・、風早は楽しそうにそう呟いた。 「別にいいけど・・・」 想像してみたら少しだけ、少しだけ楽しそうだ。 「じゃぁー、明日っ!いや、今日行こうっ!!ねっ!?」 ふんふん、と鼻歌を歌いながら風早が手を伸ばして棚に置いてあった携帯を取り出した。 「幸何したい?映画?遊園地?それとも動物園?あ、水族館でもいいよね~」 「早急だな・・・、うーん、お前怪我もあるし今日はゆっくりしないか?」 風早の頭に巻かれた包帯がまだ痛々しい。 「えぇー、俺は平気だし・・・」 「俺の家・・・、来るか?」 姉ちゃんに風早と付き合うことになったと言えばどんな顔をされるだろうか。 祝福? 弟が男同士で付き合うってなれば、どんな気持ちになるんだろう。 姉ちゃんは応援してくれるって言ってくれたけれど、本当に付き合うのはまた違うし・・・。 「小日向さ~ん、おはようございます!体調の方、いかがでしょうか???」 突然ガラっと扉が開いて、看護師が入ってきた。 「あ、あらぁ・・・お邪魔だったかしら・・・?」 まぁ、と驚いた顔をしながら看護師が言う。手に持っていたカルテらしきものを床に落としてしまう。 「内緒に・・・しておいてくださいね?」 風早が指を顎に当てて小さくウィンクをしながらそう言った。たちまち看護師の顔が真っ赤になった。 そうだ・・・、ここ、病室じゃねぇかっ!!! 第一章 幸の秘密 完結

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