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第二章 幸の悩み
『ラブホ おすすめ』
何気なく、風早の部屋に開いたままだったパソコンを見ると検索バーに書かれていた言葉。
検索一覧に表示されたのは、キラキラで豪華な部屋。全面ガラス張りの部屋なんかもあって、変なおもちゃが置いてある部屋まである。
ほー、と興味本位で読み進めていくと男同士でも大丈夫です!と注意書きされているホテルまで発見した。
・・・、風早がこれを調べているってことはラブホに行きたいってこと・・・?
俺は呑んでいたお茶を吹き出しそうになって、すぐ傍にあるティッシュに手を伸ばした。
嘘だろ・・・。
デートに行こう、と話が決まってから風早の様子が変だとは思っていた。毎日顔がニヤニヤして気持ち悪いし、テンションも高い。俺がどんだけ強くあしらっても、風早は全くこたえた様子もなくただヘラヘラと笑っているのだ。正直言って少し、いや本当に気持ちが悪い。
「あれ、幸?」
ガチャ、と部屋に戻ってきた風早が俺を見て少し固まった。歪んだ口元を見ると、俺がこのパソコンを見ることは風早にとって予定外のことだったらしい。
「お前、これ・・・」
何、という前に風早が風の速さでパソコンを閉じた。今更閉じられてもしっかり見てしまったので意味がない。
「見たよね?見たよねぇ???」
あぁぁぁ、と崩れ落ちる風早。
「ずっと夢だったんだよ、最近のラブホってすごいんだよ?キラキラで豪華で楽しいのっ!俺は幸と普通にそこで遊びたかっただけなの!やましい気持ちは三割しかないのっ!」
必死で弁解する風早に目を向けず俺はコップのお茶を飲み干した。
「三割っ!たった三!!俺にしては少ないでしょっ!!ねっ!!はいっ!!!」
そう言って風早がパンフレットを俺に渡して来た。見れば、水族館の文字。前にニュースで新しく改装されたと特集されていたものだ。
「水族館?」
「そっ!俺の完璧なデートプランがあるからっ!幸は大人しく俺についてきてねっ」
「は、はぁ・・・お前最近どうした?おかしいぞ」
「そりゃ、幸の彼氏様になれて嬉しいのっ!!」
「へ・・・へぇ・・・」
「照れてる幸もかーわいいっ!!」
抱き付こうとしてきた風早をかわすと風早からぶー、と不満の声があがる。
「俺お茶持ってるから、零れる」
「もう入ってないじゃんっ!!!」
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