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第69話

「見て、幸!ふかふか!!」 風早がベッドに飛び跳ねて言う。部屋の半分以上を埋め尽くす大きなベッドは四人以上で寝れる程である。ベッドも全て白。ラブホのベッドというと少し汚いイメージがあったので、この清潔感のあるベッドに少し安心した。 ぼふり、と音を立てて俺もベッドに倒れこむ。風早が飛び跳ねているせいで、ベッドがガクガクと揺れる。 「・・・きもちい・・・」 疲れを全て吸い取ってくれるようなベッドは花の香りがした。思わず伸びをすると、手がベッドの端の棚に当たる。 「いてっ」 ゴソゴソと棚を開くと、そこにはおびただしい量のコンドームが置いてあった。サイズ別に置いてあるのを見て、一瞬固まった。 「わ・・・」 見ないふりをして、棚を閉じる。風早はまだふかふかのベッドで楽しそうに遊んでいるので気づいている様子はない。 はぁ、と小さくため息をついて今度は小さめに伸びをした。 ピルルル・・・。 二人でゴロゴロとベッドの上で過ごしていると、風早のカバンから機械音がした。 「ん、電話・・・」 風早が手を伸ばしてカバンを漁る。寝転がったまま携帯を耳に当てて話し始めた。 「あれ、三保?どうしたの?」 相手は鹿山先輩からだったらしい。途端風早が目を見開いてどうして!と大きな声をあげた。 「俺ちゃんと今日はダメだって言った よ?・・・三保いけばいいじゃん・・・、うん、ごめん」 その後しゅんと表情が暗くなり、風早が下を向いた。 「でも俺本当に今日は行けないから、何があっても」 ぶち、と電話を切った風早が嫌そうに大きなため息をついた。 そのままごろごろと寝返りを打って俺の背中に張り付いてくる。 「・・・なんて言われたんだ?」 「ばあちゃんが俺のこと呼んでるんだって三保から。ばあちゃんからの着信来ないように切ってたのバレたみたい。でも俺今日のデート絶対に邪魔して欲しくなかったから・・・」 段々と語尾が萎んでゆく。絶対邪魔して欲しくなかった、という風早の一言に俺は心の中で喜んでしまっている。 「切っちゃってよかったのか?」 「幸は俺がばあちゃんのところに行ってもいいの?」 「そ、れは嫌・・・だけど」 「だから行かない」 「鹿山先輩に行ってもらったら・・・」 そこまで言って止まる。鹿山先輩は前になんて言っていたんだっけ。 俺は嫌われてるから行けない・・・。 「三保はばあちゃんに自分がゲイだって打ち明けたんだよ、そしたら・・・」 そしたら嫌われた。風早は最後まで言わなかったが、何があったのか予想ができた。 「俺も言った方がいいのかな・・・」 「・・・、やめといた方がいいだろ」 ぎゅっと後ろから抱きしめられて、背中で風早の鼓動を感じた。 そして、違う何かが大きくなっているのも背中越しに感じる。 俺は背中をびくり、と揺らし固まった。 「ごめん、幸・・・してもいい?」 まるで捨てられた子犬のように、悲しそうな声で言うものだから俺は反抗できなかった。

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