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第78話
オレンジ、キウイ、ぶどう。こちらも姉ちゃんに頼まれたものだ。フルーツがいっぱい乗ってるやつが食べたいと一ヶ月も前からこぼしていた姉ちゃんの話を知り合いにしたらおすすめのケーキ屋を教えてもらえた。
受け取ったケーキを潰れないようにして、慎重に歩く。
近道の細い路地に入った時だ、後ろで何かが転がる音がした。
「・・・?」
振り向くと、この間家の前にいた屈強な男二人が俺を睨むようにして立っている。思わず早足になると、おいと声をかけられた。
返事したらだめだ、と無視したまま歩いていると、不意に腕を掴まれた。ふりほどこうとしても男の力には全くかなわない。
「おいおいそんなビビんなよ」
おそるおそる男の顔を伺うが、彼は特に怒ってはいないようだった。
・・・刺激をしなければ、逃げられるのかも。
「お前の顔が怖いんだよ、俺が連れてくからお前はちょっと黙ってろ」
片方の男が笑いながら俺の腕を掴む。
連れてく?連れてくってどこに?
困惑していると、男二人は俺の腕を引っ張って、路地裏に止めてあった車に俺を無理やり乗せた。途中で持っていたケーキの袋を落としてしまうが、男はそれを気に留めもしない。視界の端で、ケーキが箱から漏れ出し、フルーツが地面に散らばったのが見えた。
太い縄で腕を後ろで縛られて、後部席に転がされる。
暴れようと足を上げても、すぐに男に押さえつけられてしまった。
「ぅっ・・・」
「大人しくしてろ、すぐ着くから」
男が小さくそう呟くと、車はすぐに発進した。転がされているせいで、窓からどこを走っているのかは見えない。どこへ向かっているのだろう。
気づいたら俺は意識を失っていた。
頰に何か冷たいものを感じる。目を開くと知らない部屋が見える。その奥に見覚えのある人が一人。
「く、栗原・・・守っ!?」
シンプルな椅子に座ったまま、目を閉じる栗原がいる。寝ているのか、俺が名前を呼んでも反応はない。
起き上がると、体全体に疲労を感じた。縛られている手首が痛い、後ろで縛られているのでどんな縛られ方をしているのかがわからない。
どうにか立ち上がって、周りを見渡す。殺風景な部屋だ。
栗原が座っている椅子の他に、なにもない。
ゆっくりドアへと近づいて、ノブを捻る。ガチャ、と静かな部屋に音が響いた。
開いた・・・。
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