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第79話

殺風景な部屋とは打って変わって、廊下へ出ると派手な装飾が目に付いた。というか、廊下がでかすぎる。 栗原がいるってことは、もしかしたらここは本家と呼ばれるところではないのだろうか。 どうして自分がこんな場所に連れてこられないといけないのかは謎だったが、とりあえず逃げ出そうと廊下へ出た。 一定間隔で置かれる絵画や花瓶、高そうな壺。絵に描いたような豪邸だ。部屋もいくつもあって、きっと地図がないとここの家には来ることができない。 「なんですって!!それは本当なのっ!?」 突然すぐ近くの部屋から誰かの叫び声が聞こえた。ドアが少しだけ開いているので、見ればあの時のお婆ちゃんが目を吊り上げてベッドの上で叫んでいる。隣で佐野さんが動揺してお婆ちゃんの背中をなだめるように撫でていた。 「許さないわ、そんなの。私があてがったお見合い相手はどうなったっていうの!?」 お見合い相手、その単語が聞こえた時なぜか頭の中に風早の顔がよぎる。きっとあの人が風早のお婆ちゃんなのだろう。 「ふざけないでっ!あの子は私が見つけてきたの。例え血が繋がっていなくても、私はあの子の母親よっ」 怒って携帯の電源を切ったお婆ちゃんが携帯をぶん投げる。近くの花瓶に当たってガシャンと大きな音を立てて割れた。 「坊ちゃんのことですか?」 「ええ、監視から連絡が届いたのよ・・・。男と付き合ってるって。嘘よね、嘘って言ってちょうだい、三保だけじゃなくて風早まで・・・」 坊ちゃん、やっぱり風早のことだ。それに監視っていくらなんでもやりすぎではないか。 先ほど見たあのお婆ちゃんの姿はない。悲観的な表情で彼女はベッドの上で、小さくうずくまる。 「出てってちょうだい・・・」 佐野さんがその言葉にお辞儀を一つして、ドアの方へ歩んでくる。 やばい、見つかる。咄嗟に隠れる場所を探すが、あいにく廊下じゃ隠れるところがない。 お婆ちゃんの部屋と反対側の部屋のドアノブを回すと、よかった・・・開いた。俺は見知らぬ部屋に飛び込んだ。 その部屋は小さな物置らしかった。綺麗に整頓された棚に、いくつものアルバムが入っている。大きなガラスのショーケースには、サッカーの優勝トロフィがたくさん飾られていた。 小日向風早と書かれたトロフィで埋め尽くされていて、なんだかひどく風早が遠くの人のような存在に思えてくる。 それにお見合い相手までいたなんて・・・、まぁ当然だよな元々家を継ぐために引き取られたって言ってたし。確かに風早には欠点がない。なんでもこなすし、最近ずっと一緒にいるが風早に本気で嫌悪を感じたこともない。お婆ちゃんが風早にあんなに執着するのもわかる気がした。 ぶーぶー、とお尻のポケットに入っていた携帯からバイブ音がする。見れば風早からの着信だった、 「幸、幸、大丈夫?今どこ?教えて」 「え、いや、俺は大丈夫・・・。多分、本家・・・」 「やっぱり・・・最近変だなって思ってたんだよ、すぐ行くから待ってて」 風早がすぐに電話を切ってしまうような気がして俺は思わず引き止めた。 「待って、なんでわかって・・・」 「愛の力って言いたいとこだけど、幸の鞄が道端に落ちてたの。あと、潰れたケーキも。あとでケーキは弁償するから・・ごめんね」 「あっ、ちょっ」 ツーツー、と機械音が鳴り響く。風早は焦っているみたいだった。 当たり前か・・・。ちょっと嬉しい。 俺はここから動いたら危険だと思って、物置の端に座り込んだ。 日はもう落ちている、頭上で一番星がきらめいた。

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