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第95話
まぁ、当然着せられちゃった訳で。むすっと不機嫌そうな顔をしていると、可愛いから、と謎のフォローを入れられる。スカートの中がスースーして落ち着かないし、っていうかこんな服着てる自分が気持ち悪い。
ぽす、とウィッグも被せられて髪なんて軽いはずなのに頭が重く感じる。髪を整えられて、極め付けにあのリップだ。鏡がなかったからどんな顔してるかわかんなかったのが良かったけれど、多分俺すごい顔してる。
「おぉ〜」
ぱちぱちと風早が拍手をする。
「めちゃくちゃ可愛い。惚れ直しそうだ、俺」
痛いくらいの視線を感じて俺は目をそらす。風早の言う可愛いにどうしても弱いのだ。頬がうっすら熱くなっているのを感じて顔を手で覆った。あぁだめだ、めちゃくちゃに熱い。
髪をするっと撫でられて、そのまま指先が首筋を辿って行く。触れられた所から身体がもっと熱を持つ。
「ぁっ・・・」
風早の手から逃げるように腰を引くと、がっちりと腰を掴まれた。逃げられない。風早の顔を見ると、発情した獣のように鼻息を荒くさせて俺を見つめていた。
「ごめん、我慢できないかも」
そう言った風早が噛みつくようなキスをする。口内をぐちゃぐちゃに弄られて、よだれが垂れる。服に垂れちゃいけない、と手で拭うがその手も掴まれた。
「ん、ちょっ・・・」
「汚していいよ、後で洗濯するし」
それよりも、と風早がまたキスをしてくる。いつもならゆっくりめのキスが激しい。上顎を舌先で刺激されて、上擦った声が出た。キスしたままベッドに押し倒される。こんな服着てるせいか、いつもより心なしか興奮してる、俺。きっと風早は俺の興奮を感じ取っているのだろう。焦らしているつもりなのか、押し倒したあと触ってこない。深いキスだけだ。
「ぅっ・・・ぁっ」
じゅるる、といやらしい音を立てて口端のよだれを吸い取られる。
「掃除機だ」と笑うと「吸引力なら誰にも負けないから」と笑い声交じりの声が頭上から降ってくる。やばい、なんかにやけが止まんないや。さっきから体がふわふわしてる。お婆ちゃんに話してもらえたことが嬉しかったのだろうか。それとも、風早が迎えに来てくれたからだろうか。
きっと両方だ。
風早の行動一つ一つに一喜一憂している自分も自分だけど無意識なんだからしょうがない。
「幸、何笑ってるの」
ほっぺたをむにぃ、と摘ままれて「うぇ?」と声が裏返る。
「もう可愛くてどうしようって思ってる。狂っちゃうよぉ」
ぐりぐりと胸元に頭を押し付けてくる。風早の髪からシャンプーの香りが漂ってきた。俺も今同じ匂いだよ。
「・・・、いいよ、く、狂っても」
「へ、?」
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