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第100話

「幸のお姉ちゃんには俺から連絡しておきました。あと今日学校休むって連絡もしました。勝手にごめんなさい」 また深々と頭を下げる風早。風早の敬語なんておかしすぎて今度はケラケラと声を上げて笑ってしまった。 「ねぇ、だから何がおかしいのっ」 「わかんねぇけど、なんか面白い・・・からもうちょっとそのままでいてて」 ベッドの脇に置いてあった携帯を取り出してパシャりと写真を撮っておく。また不満そうに風早は眉をひそめるが俺は気にせず待ち受けにした。いつも余裕そうな風早の別の顔だ。俺としては気持ちよかったし、また奥まで突っ込まれてやるかと思っておく。 コンコン、とドアがノックする音がして「幸さん、お目覚めと聞きました。具合はいかがでしょうか?」と佐野さんの声がした。 「お、俺は大丈夫ですっ」 慌てて返事をすると「朝食の用意が出来ております。一階へいらしてください」佐野さんが答えた。 そういえば、ここ風早の家だったんだ。しかも本家。 俺は、なんてことしちまったんだ・・・。佐野さんが具合を気にしているということは、きっと風早と俺が何したか気づいているのだろう。今更風邪を引いたとか言っても遅そうだ。 「幸?」 律儀に正座を続けていた風早が首を傾げる。 まさか風早が気を遣って佐野さんに俺が風邪引いたとか、言ってくれてる訳ないもんなぁ。姉ちゃんにはなんて言ったんだろ。 「・・・足痺れた」 「もういいよ、俺腹減ったからご飯食べよ」 俺がそう言えば、風早はパァと笑顔になって立ち上がる。しかし、足の痺れがあるのか動作がゆっくりだ。 ちょんちょんと痺れただろう足を触ってやると、「やめっこらっ幸っ!」と焦ったように風早が俺を睨んできた。 ・・・ちょっと楽しいかも。 部屋の端に逃げた風早を追いかけようと俺もベッドから立ち上がると足に力が入らなくて床にペタンと座り込んでしまった。 「さ、幸大丈夫!?」 慌てて風早が痺れた足をさすりながら、俺の方へ飛んできた。心配そうに俺を見つめる風早。 「足に力入んなかっただけだから別に平気」 気恥ずかしくなったからベッドに手を掛けて立ち上がろうとしたら風早が俺の腕を優しく引っ張ってくれた。 「俺のこと頼ってよ・・・」 「お前今足痺れてるだろ」 またちょんと風早の足を触ると、今度は風早がバランスを崩して倒れ込んだ。一緒になって俺も倒れてしまい、風早に覆いかぶさる。 「うぁっっ」 「幸っ」 驚いて思わず目を瞑ったが、痛みがない。どうやら風早が俺を受け止めてくれたようだ。 「もぉ・・・やめてよ」 「・・・ごめん」 風早の胸板に頭を置くと、優しく頭を撫でられた。風早の手は大きくて温かい。 「キスしてくれたら許してあげる」 頭上からそんな声が降ってきたので、俺は中指と薬指を親指にくっつけて狐の手を作り、その指先を風早の唇にくっつけてやる。 「ほら、ちゅー」 「ねぇ可愛い・・・」 てっきり違うでしょ!なんて怒られると思っていた俺だったので少し驚いた。 「可愛くないし」 即座に手を引っ込めて、俺は風早の胸板に顔をうずめる。ドクドクと心臓の音が聴こえてきて、何だかとても安心した。

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