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第102話

「得意なものは料理で、オムライスを作るのが好きね。俺と同じ高校に通ってて、同じクラス。そこで出会って、運命感じちゃった設定にしよう。それで、んー、他何がいると思う?」 「そうですね・・・、一応幸さんの家族構成とかも確認しておいた方がいいんじゃないですか?」 「お姉ちゃんがいるんだっけ、何個上なの?」 「・・・、三つ上」 風早と佐野さんはお婆ちゃんに会うとき、口裏を合わせるために会議をしている。俺はというと、別に女装に乗り気な訳では決してないので、この会議にあんまり参加していない。 「おっけおっけ。あ、やっぱり俺たちがどれくらい仲良しかをお婆ちゃんに見せた方がいいと思うんだよね。何て呼び合ってるかとかも決めとこうかな」 「いいんじゃないですか、お互いをあだ名で呼び合うほどの仲だとお祖母様も驚かれますね」 「じゃぁ、俺はハニーって呼んで・・・。幸は俺のことダーリンとか・・・?」 「実に微笑ましいカップルです」 「あとはー、あっ!もう子供出来たっていうとかっ!!」 「既成事実を作ってしまったと?」 「そうそう、もう婚約もしちゃった、みたいな」 ここまで静かに聞いてはみたものの、もう我慢ならない。ハニーとダーリンも聞き捨てならんが、なんだ既成事実って。 「どういうことだっ!真面目にやってんのかっ!!」 立ち上がって、そう怒鳴ると風早は特に悪びれもなく頷いた。 「俺はいつでもまじめだよ。細かいところも決めた方が納得するでしょ?」 「う、う・・・ん・??」 「俺たちがラブラブすればするほどばあちゃんも喜んでくれるよ。ね?」 「はい、私もそう思います。お祖母様は坊ちゃんのそういうお姿を望んでらっしゃったんですよ」 「そ、そうなのか・・・?」 上手く丸め込まれている気がする。これでいいのか俺。 「そう。幸は俺の理想ぴったりで金輪際別れることはありませんって証明しなきゃいけないから、ね?」 「は、はぁ・・・」 戸惑い気味に頷くと俺が全てを許したみたいな雰囲気になった。失敗した。 「ちなみに、俺的には幸の全てが理想だけど俺のばあちゃんの思考は古いから女はみんな髪を伸ばすべきって思ってるんだよね」 あえて突っ込まずに風早の話を聞いてやる。風早がダンボールから何か黒い塊を取り出してテーブルの上に置く。 「か、髪の毛・・・」 「そ、サラサラツヤツヤロングヘアーで行こうと思う」 昨夜無理やりつけられたウィッグとはまた別のものだ。どうしてこんなウィッグを持っているんだ、こいつは。 「で、やっぱり男はナチュラルメイクが好きなんだよ。だからつけまとかは付けずにほんのりピンクのアイシャドウとか付けて・・・。幸お肌スベスベだからパウダーとかはいらないかも」 何語を喋ってるんだ、こいつは。 「そうですね、薄いメイクでも十分映えると思いますよ」 「だよね?だったら別にメイク道具とか買い足さなくても家にあるやつでいっか」 二人して俺の顔をジロジロ見ながら話している。とてつもなく居心地が悪い。微妙そうな顔をしている俺の頬を風早が引っ張る。 「そんなに心配しなくても俺が完璧美少女にしてあげるからバレないバレない」 「バレるバレない以前の問題だっ!!」 ほんとなんなんだっ!こいつは!!!

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