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第104話

「名付けて学校帰りに俺が幸にプロポーズしてそのままばあちゃんの部屋訪ねちゃう計画!!」 風早がそう言って嬉しそうに拍手する。後ろで佐野さんも小さく拍手していた。俺はしてないけど。 「なげぇ」 「分かりやすいでしょ?学校帰りに俺が幸にプロポーズしてそのままばあちゃんの部屋訪ねちゃう計画って名前」 噛まずにすらすらと言える風早に俺は思わず顔をしかめる。それを風早は俺がこの計画を理解していないと思ったらしい。もう一度長ったらしい名前を言おうと口を開いた風早を俺はすぐに止めた。 「わかったわかった!!わかったから!学校帰りにプロポーズでなんちゃらかんちゃら計画だろ?」 「ほんとに分かってるの?俺たちは学校から帰ってきたっていう設定だからね。今日は学校休んだ、とか言わないでね」 「あぁ、わかったよもう」 「あと男みたいな口調もやめてね」 「・・・は?」 「当然でしょ!幸は今から幸ちゃん!女の子!股広げて座んないし、おい!とかお前!とかこいつ!とか絶対に言わない。あと低い声で話さない!」 早口でまくし立てられて何だか圧倒される。まるで体育の熱血先生みたいに気合十分の風早はとてもうるさいのだ。 「絶対ボロでるから・・・」 今まで女の言葉とか喋ったことないし、っていうか俺女声出したことないし。 どうしたものか、と悩んでいると風早が小さく耳打ちしてきた。 「えっちしてる時幸の声高いよ?その声で行こ?」 「ふ、ふざけんな!!!絶対やらねぇ!!黙ってるわ!!!!」 「えーーー、あの時の幸の声俺めっちゃ好きなのに」 ぶーたれた風早が俺のウィッグの毛をくるくると指に巻く。髪の長い女子がよくやる仕草だ。学校で見たことがある。 「そんな顔してもやらない。静かに頷いてたらいいんだろ」 「あー、まぁそうだけど。・・・あ、幸の女の子のタイプって黒髪ロングで清純派??にっこり笑って頷いてるタイプの女の子好きでしょ」 図星だった。 というか、以前読んだ漫画にそんなキャラがいたのだ。可愛くて仕方なくてクラスに似ている子がいないか探したこともあった。 「・・・うるさい」 「図星だったんだ。悪かったね、黒髪でもないし、清純でもなくて」 嫌みったらしく言う風早に、俺はすぐ拗ねているのだと気づいた。めんどくさいやつ。自分で言い出したことなのにすぐ拗ねるなよ。 風早の嫌みをスルーすると、更にしょげた顔をされた。 また小さくちゅーしてくれたら許す、とか言われて俺は風早の足を踏んづける。 佐野さんがいるんだよばか、と返すと何故か佐野さんが部屋からすっと出て行った。 「さっすが佐野さんわかってる。ほら、ほらほら」 風早が俺の目の前で目を閉じる。あぁもう、と苛立ちながら俺は唇に触れるくらいのキスを落とした。 また額にキスしたら怒られるからだ。 俺も少しは成長していると思う。

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