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第108話
「おかえり」
久しぶりに家に帰った気がした。ドアを開いたら姉ちゃんがソファに座っていて、メールに返信していなかったことを今思い出した。
「た、ただいま」
何か小言を言われる前に部屋にこもってしまおう、そう思ってすぐさまリビングを飛び出した。二階へ上がっている途中、さっちゃんと呼び止められる。
「風早くんのとこ行ってたの?」
「え、あ、お、おう・・・」
隠したところできっとバレているだろう、そう踏んで俺は頷いた。小さくため息をついた姉ちゃんが腰に手を当てて言った。
「あんたねぇ、お母さんも心配するんだから連絡入れるなら自分で連絡しなさいよ」
「ご、ごめん・・・」
風早のせいで無理だった、といっても通じないし俺は素直に謝った。ここ最近家を空けていたせいで母さんに長い間会っていない気がした。
「あと今度ちゃんと風早くんうちに連れて来なさい。お母さんも気づいてるから誤魔化さなくていいよ」
「ぅ、バレてる・・・?」
「あんたバレてないとでも思ってたの?言っとくけどバレバレだから」
本家の事情とかもあって自分の家のことをすっかり忘れていた。風早なら喜んで家に来そうだが、母さんはなんて思うだろう。今更になって、風早の気持ちを理解できたような思いだった。
「わ、わ、わかった・・・」
それだけ言って階段を駆け上がった。自分の部屋のドアを開いてすぐに入り込む。風早に急いでメールを打ち込む。
『俺の姉ちゃんが風早を家に連れて来いって』
数分で既読がついて、『いいよ〜』と簡潔な返事が届いた。どうしてそんな軽く生きられるんだ、こいつは。
『学校終わりとかならいつでも空いてるけど、いつがいい?』
続いてそんなメールが送られて来て、先だと思っていた風早の訪問はすぐに実現しそうである。
『明日学校で決めよう』
俺も簡潔にそう返信して携帯を閉じる。お婆ちゃんの問題も解決、してはいないのに次々と何か起きてしまう。
いつになったらひと息をつけるのだ、と俺はため息をついた。
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