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第130話
「かわいい」
気づけばシャツを捲りあげられていて、さっき貼ったばかりの絆創膏が顔をだした。貼っているのを見られたくなくて、わざわざトイレで貼ったのには散々風早に不満を言われた。俺が貼りたかったって。
「顔真っ赤じゃん、かわいい」
「さっきから、かわいい・・・ばっかり」
声をあんまり出さないっていう意識を保つために、風早がかわいいって言った回数を頭の中で数えることにした。今で二回目。
「かわいいは嫌?じゃぁ、かっこいい」
乳首に絆創膏貼って、それを丸出しで、赤面してる男をかっこいいとは何事か。今すぐこいつに辞書で調べたかっこいいの意味を教えてやりたい。何が見た目や言動が人に好印象を与える、だ。って思ったけど人それぞれ好印象という価値観は違う。もしかしたら風早が俺に感じている好印象が、これ(俺の今の姿)なのであったら言葉遣いは間違っていない、し。
「考えごと?だったら俺頑張っちゃおっかな」
悶々とどうでもいいことを考えていたらいつの間にかシャツを脱がされていた。コショコショとへその周りを撫でられて変な気分になる。
「ぅっ・・・ぁっ」
「気持ちいい?くすぐったい?」
「くすぐったい・・・」
「うそつき」
「う、嘘じゃないし」
「う、そ、つき」
ベロン、と大きく舌でへそを舐められて背筋を凍らせた。意識してはいけない、いけない、そう思ってベッドの隅のクマを見つめる。
「ぁ、っ」
「声我慢してるの?かーわいい」
三回目、三回目。ぐっと歯を食いしばって声を出さないように努めるが、隙間から洩れる声が風早をもっと熱くさせるらしい。
「うっさ、あぁっぁっ」
指先でトントン、と乳首の先を突かれて思わず開いた口に手を当てて塞いだ。たまに聞こえてくる一階からの母さんの笑い声や、姉ちゃんの話し声で現実に引き戻される。そうして理性をなんとか保っていた。
だが体は正直で、えっちしたいと風早に言われた時点で反応していた。とっくに後に下がれない状況なのは俺が一番わかっている。風早もきっと気づいてはいるのだろう。気づいている上で楽しんでいる。そういうやつなのだ。
口に手を当てたまま必死に思考を巡らせて意識を乳首に持って行かないようにしていたら、視界の中に風早が消えていた。
あれ、と天井を見つめたまま静止する。終わった?と首をかしげていると、いきなり下半身に温かい何かを感じた。
「ぅっ、ぁっ、まじでっ」
尻を舐められている。頭でようやく理解したら、もっと恥ずかしくなった。
「汚い、汚いから、やめ、やめっ」
もう口に手を当てるのをやめて押し返すように風早の頭をポンポンと叩く。だが、ちゃんと力が入らなくて途中から風早の髪を撫でているだけになっていた。
「汚くないよ、さっきお風呂にも入ったし洗ったでしょ?」
窄みの皺を丁寧に舐められる。こんなの味わったことのない感覚だ。未知の気持ちよさにびっくりした。
「で、も汚いぃっ」
「汚くないから、大丈夫大丈夫」
「何が大丈夫だっ、あっ、いや、やだっ」
ぬるり、という感触がして舌が中に入ったのを感じる。ひぃっ、と女みたいな悲鳴をあげた俺は声を出してはいけない状況であることを忘れ、背中を仰け反らせた。
嫌だ嫌だと泣きながら首を振って風早に縋ったが、彼に届いていない。もう一度嫌だ嫌だと風早の行為を否定しようと思ったら、今度は舐めながら扱かれてその言葉は喘ぎ声に代わってしまった。
「いっ、ぁぁっ、もっ、やっあぁっ」
先っちょを重点的に攻められてもう何が何だか分からないくらい涙がこぼれだす。きっと下もぐちょぐちょだ。シーツ洗うのどうしようとか一瞬頭に過ぎったが、一瞬だけだった。あとは快感に支配されて気持ちいいだけだ。
どれくらい時間が経っただろうか。顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったころ、ようやく風早が顔を離した。はぁはぁ、と肩で息をする俺をそっと抱きしめてくれた。
「・・・挿れていい?」
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