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第131話

「聞くなよ・・・、ばか」 「あぁ、もう好き」 すっかり緩くなってしまったそこに先端を押し込まれた。力の抜き方はようやくわかってきた。ぐ、と腹に力を込めるとずぷん、と入ってくる。 「ぁっ・・・、ああ、」 今更ながら服の裾を咥えて声を出さないように努めた。家族にはもう聞こえているかもしれない、でも早く奥まで欲しい。そう思って風早が挿れやすいように腰を少し浮かせる。優しく腰を抱かれてそのまま奥まで一気に入ってきた。 「ッッッンッ」 ぎりぃと思わず服の裾を噛みしめて快感を堪える。裾がとても塩っ辛い、涙の味だ。うう、うう、と声にならない呻き声をあげながらひたすら耐え続けた。ゴリゴリと奥を擦られるだけでこんなにも快感を味わえるのが不思議だった。 互いの肉が擦れる音と激しい水音が耳を支配する。ぐわんぐわんと頭に響いてくる。おかしくなりそう。 「ゆ、るして、ゆるしてっ」 イきすぎて辛い。もうイけない。無理無理。たわごとのように嬌声と交えながらつぶやく。 「辛いの?」と風早に声をかけられて俺はぶんぶんと首を縦に振った。 不意に一階から大音量で栗原守の曲が流れているのが聞こえてきた。きゃーという歓声も聞こえてくるからきっと先月発売したアルバムについていたライブの映像だ。なんで今流してるんだろう、こんな大音量で・・・。ライブの抽選に外れた時の姉ちゃんは魂が抜けたみたいに沈んでいた。 「あんまり聞きたくない歌だねっ」 風早がまたしかめっ面になって腰を激しく揺さぶった。ああああ、とまた声が出る。そんな俺にお構いなしに、風早が機嫌悪そうに腰を振っている。 一階から姉ちゃんが熱唱する声までもが聞こえてきた。案外うちの姉ちゃんは音痴だ。不機嫌な顔をしている風早を見つめながら、姉ちゃんの歌声を聴いているのは変な気持ちだ。俺も歌ってやろうと思ったけど、口からは喘ぎ声しかでなかった。 恋人としてるときにそんな機嫌悪い顔するなよ、って思ってたら俺の顔もいつのまにかしかめっ面になっていたらしい。 眉間を人差し指で押されて気づく。途端に風早が腰を止めて「ごめんね」とつぶやいた。 「・・・、別に」 そのあとちょっと微妙な空気になったけど、お互いちゃんとまた達して終わった。べたべたになった体をタオルで拭いてベッドに二人で横になる。 枕が一つしかなくて、一緒に同じ枕を使ってみたら案外距離が近くなりすぎてびっくりした。「近いね」「近いな」二人でそう笑いあった。

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