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第136話

「風早今、何してんの?」 「・・・知らない」 「連絡ないのか?」 「ないよ」 連絡くらい寄越してくるかなって思ってたけど、俺の携帯を鳴らすのはゲームの要らない通知のみ。あとは守からの今日会わねぇ?というメールだけ。なんとなく自分から連絡するのも気が引けて風早とは連絡を取れていない。忙しそうだし、返信が来なかったときが多分怖いのだ、俺は。 「連絡すればいいのに」 「俺もそう思う・・・」 「なんだそれ」 連絡してみようか、と思って携帯を開いたけどメールの画面までいってやめた。なんて連絡すればいいんだよ。 「普通に会えなくて淋しいって言えばいいだろ」 携帯の画面をのぞき込んできた守が言った。確かにそうだ、でもなぁ、ううん。元気にしてるか、と打ってみてやっぱり消す。次に最近どうか、と打ってみてやっぱり消す。そんな俺の様子を見てもどかしくなったのか、守が送信ボタンに指を置く。 「や、めろってば」 「次打ったの強制的に送るから。お前の本音でも書いとけよっ」 「やだよ、恥ずかしい」 「え?会いたい?俺が打ってやろっか」 するっと携帯を盗まれて、あっという間に守は「淋しいから会いたい」なんて恥ずかしすぎる文章を風早に送ってしまったのだ。すぐに送信取り消ししようと守から携帯を奪い取ったが、既に既読のマークがついていた。 「あっ、お前・・・」 ぎろりと守を睨んでも、目をそらされる。むかついてサングラスも取ってやろうと腕を伸ばしたら店員がコップを二つ持ってこちらにやってきた。 「キャラメルフラペチーノとバニラオレです」 すぐに伸ばした腕を仕舞い込んで、椅子に座った俺を見て守がひぃぃと変な音を立てて笑っている。むかつく、その笑い方もむかつく。 「・・・彼女さんですか?」 むかつく、とまた守のことを睨んでいたら店員がそう話しかけてきた。へ?と店員を見れば眩しすぎる笑みを浮かべている。 「あ、いやさっき少しお話聞こえてしまって」 「そうなんです、こいつ恋人と最近会えなくて淋しがっててぇー」 店員の言葉に守がすぐさま反応する。え、え、とあたふたしていたら「可愛い彼氏さんじゃないですかぁ」「ですよねぇ?だから俺もどかしくってぇ」なんて会話を目の前で繰り広げられていて、自分の頬が段々熱くなるのを感じた。 「そんな照れるなって、誰だってだーいすきな恋人と離れ離れになったら淋しいもんだから」 「・・・うるせぇよ」 携帯がぴこん、と音を立てたので見てみたら風早からだった。ちらりと見れば『どこにいるの』とメールが来ていた。 「返信来たのか?」 すぐに携帯を覗きこまれて、隠している暇もなかった。メールを見た守がふぅん、と意味ありげに俺を見つめてくる。 「なんだよ・・・」 「俺、邪魔っぽいな?」 「別に・・・」 今もきっと忙しいのだろう、風早は。すぐに会えるわけない。 ぴこん、とまた携帯が音を立てた。『ちょっとなら時間作れそう。会える?』心臓がどくん、と跳ねる。思わず、バニラオレを一気飲みしてしまった。 「で、会いに行くわけ?」 目の前に空になったコップがある。守のキャラメルフラペチーノはまだまだ残っている。 「・・・、行ったほうがいい?」 「行けよっ」 慌ててバニラオレの分のお金を払おうと財布をポケットから取り出したら「今日は俺の奢りな?」と守が笑顔で言う。その優しさに甘えて俺はすぐに立ち上がった。 「い、行ってくる・・・」

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