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第148話

「別に顔が怖かろうが気にしねぇよ。・・・顔で好きになった訳じゃねぇし」 「へ?なんて?なんて?」 「もう言わねぇっ!!」 「あぁ、もう可愛いんだからぁっ」 「・・・うるせぇ」 なんか段々恥ずかしくなってきた。久しぶりに会えてきっと俺浮かれてんだ。 「幸、体冷えてる。そろそろ戻ろ?」 手を取られ、俺たちは歩きだした。風早の手は暖かい。誰もいないので、堂々と手を繋ぐことができた。 「なぁ・・・」 「なーに?」 「お前のお婆ちゃん、最後なんか話してた?」 二人の歩く音だけが、夜空の下響く。車も通らず、時節吹く冷たい風が首を通り抜けていった。 「・・・、ありがとう、でしょ」 風早にも聞こえていたんだ。 「あれって、やっぱり・・・」 「ばあちゃんなのかな、って俺も思ってた。あーあ、俺逃げてばっかりだ」 「逃げてた?」 「佐野さんに言われたから知ってた。ばあちゃんが、もう一人の方のばあちゃんは俺のことちゃんと見てくれてること」 「逃げてたら、立ち会わないだろ・・・、」 「幸はどうしてそんなに優しいの?俺、ここのとこずっと後悔しっぱなしだもん」 優しい、なんて言葉自分には合わないと思っていた。前にもお婆ちゃんに言われたことがある。あんたは優しい子だねって。 「優しい訳じゃ・・・、お婆ちゃんと同じこと言うなよ」 「うん、そっか、幸はばあちゃんのもう一人の人格に気づいてたんだね」 「お前には自由に生きてほしいって、言ってたぞ」 「・・・うん」 風早をふと見れば、また涙を流していた。また鼻が赤くなるぞって言おうか迷って言わなかった。泣いている風早の手を強く握れば、握り返される。 「俺、守に代わってあの家継ごうかなって思ってる」 「そうか」 「でも、俺後継ぎ産むつもりないから、世襲制は終わりにするよ」 「え・・・、」 「っていうか、俺も血は繋がってないから世襲も何もないんだけどね」 へらっと笑う風早の瞳にはもう涙は残っていない。まだ鼻は赤いけど。 「守は・・・、どうするんだ?」 「まぁ、あいつが放棄すれば俺が後継がなきゃいけなくなるからね。話し合うよ・・・って、幸。ずっと思ってたこと聞いていい?」 ぎりぃ、と俺の手を潰すくらい強く握った風早が般若の形相でこちらを向く。あぁ、また怖い顔してる。 「な、なんだよ」 「なんで、守って呼んでるの?仲いいの?どういうこと?」 「あっ」 しまった、しまったしまった。俺がしまったという顔をしていたら、風早が眉間を皺を濃くさせた。おぉ、怖い怖い。 「あっ、ってなに!!どういうこと!!!密会?俺をのけ者にしてランデブー?」 「はぁっ!?なんでそういう思考になんだよっ!!普通に友達なだけだろっ!!!」 「友達ぃ???栗原と?本気で言ってる??」 「本気だし。守も良いやつだよ」 「なにそれ俺知らない」 「守もお前と仲直りしたがってたから。今度遊園地でも行って来いよ」 守と一緒にお化け屋敷に入ってやれ、と心の中でつぶやいておく。 「遊園地は幸と一緒に行きたいです」 こいつも大概だ。守と同じことを言いやがる。でも、守にはついていくって言ってしまったのでここで断ると厄介だ。二人して行こう行こうとうるさくなるに違いない。 「わかった、わかったから。三人で行こう」 俺だってお化け屋敷好きじゃないのに、と今度は心の中ではなくて口に出したら風早がぎょっとした顔でこちらを見た。さっきから風早の顔が光りの早さで変わっている気がする。見ていて飽きない。 「え、何?なんて言った?」 「なんでもない」 「嘘でしょ、ねぇっ」 「嘘じゃねぇよ」 ぱっと手を離して俺は坂を駆けのぼる。あと二つ坂を登れば病院だ。時間もそんなに経っていないだろうし、入れるだろう。 「ちょっと、置いてかないでっ!」

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