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第149話

焦った様子の風早が小走りで坂を駆けのぼってくる。追いつかれないように俺もまた走ったが、途中で何か変な感じがしてすぐ立ち止まった。 「幸・・・?」 すぐに風早がふらついた俺の体を支えてくれた。冷や汗がこめかみから伝って首筋を濡らす。ズキズキと頭が痛んで、視界がぐにゃりと歪んだ。 「幸っ」 道の端に俺を座らせた風早が心配そうな顔をして俺を見つめる。 「ごめ、ちょっとはしゃぎすぎた・・・」 病み上がりにこんなに走ったらそりゃぁ体がびっくりするはずだ。少し休めば治る、と風早に言っても風早はずっと心配そうな顔をして俺を見つめていた。 「俺も、ごめんね。幸、辛いのに・・・」 「お、前は悪くないだろ」 俺が勝手に病院を抜け出したのだ。そのことで風早が責任を感じるのはおかしい。 頭痛はしたが、目がはっきりとしたので立ち上がろうとすると風早に抱きかかえられた。お姫様抱っこ、なんだか初めて風早に会った日を思い出す。 「お、重いだろ」 いくら細いと言われても、一応健全な男子高校生だ。俺を抱きかかえて坂を上るなんて。 「軽いよ、っていうか軽くなった?病院食少ないんじゃない?」 「へ・・・」 無理だろう、と思ったが風早は息を切らすことなく俺を抱えて歩いている。やっぱり、筋肉量が違うのか。確かに、脱いだら結構筋肉あるもんな、こいつ。って、何考えてんだ俺。落ち着け落ち着け。 あらぬ部分が反応しそうになって、俺は唇を噛んだ。 「幸?」 突然立ち止まった風早が俺の顔をのぞき込む。いかん、バレる。こういう勘は動物並みに鋭い・・・から。 「ほんとに大丈夫?顔真っ青だよ」 「へっ」 あぁ、なんだ。ほんとに具合悪そうなのか、俺。そうだよな、うんうん。 「って言うと思った?」 クスクス笑う風早はもう俺を心配している顔ではない。いつもの悪戯好きの顔だ。元に戻って嬉しい反面、嬉しくない気持ち。 「もぉ、幸ってば俺と会ってすーぐそういうこと考えちゃうんだ。かわいいなぁ」 「な、なんでそうなるっ!!」 「幸、心臓バクバクしてるの丸聞こえだよ」 「うっ・・・」 「久しぶりに俺に会えて興奮しちゃった・・・?」 「んなわけねぇだろ」 「あれま、残念」 あっという間に二つの坂を歩き終えた風早がそのまま病院へと歩き出す。さっきよりも具合はましになったので、下ろしてと言っても風早は俺を下ろそうとしない。 「お、おい、もういいって」 この先は病院の敷地内だ。見つかったら厄介だし、なんて説明すればいいのかって感じだし。 「だめ、あともうちょっと歩くでしょ。ほんとに顔色悪いから」 「・・・、お、おう」 まただ、俺を心配する顔に戻ってしまった。俺は反論できず、風早の大きな腕の中縮こまっていた。 「ありがと・・・」 「どういたしまして」

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