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第154話
「はぁっ、ぁ・・・っ」
二人で荒い息を繰り返し、目が合って微笑む。ゆっくりと俺の足を下ろし、ズルンと性器を抜いた風早がゆっくりと俺の上に覆いかぶさった。
「重いよね、ごめん・・・」
そう言って風早が体をズラし、俺の隣に寝転んだ。ギシ、とベッドが軋み急に辺りが静寂に包まれる。
「なんか、凄かった・・・」
エロすぎだよ、と風早が少し笑った。正気に戻ってきた俺も、自分が何を言って何をしたのか思い出すだけで恥ずかしくなった。
「わ、忘れてくれ・・・」
何がいいから早く、だ。何が早く、ね、早く、だ。恥ずかしすぎる。
風早の顔を直視できなくて、布団を被ったらすぐに剥がされた。
「・・・見んな」
「なんでよ、かわいいのに」
またちゅぅ、とおでこにキスされた。吸われて、皮膚がヒリヒリする。
「かわいくねぇよ」
風早から逃げるようにまた布団を被る。剥がされないように手に力を入れていたら、脇をくすぐられた。
「や、やめっあっはぁっ」
思わず脇をしめれば、風早の手が脇に挟まった。それが脇の中でゴニョゴニョと動くものだからたまらない。
「むりっむりむりむりっ、やめってもっ」
ゲラゲラと笑いながら、風早の腕を引っ張るがビクともしない。
「なんでっ、あはっやはっ、あぁっ」
「エロいエロい、もっとくすぐってやる〜!!」
脇だけでなく、首元から耳に掛けてコショコショとくすぐられて ベッドの上で暴れまわる。ガンっと、思わず何か蹴った気がして隣を見れば風早が顔を歪めていた。
「痛い・・・」
その隙に俺は脇から風早の腕を引き抜いて、ベッドの端に逃げる。どうやら風早のお腹を思いっきり蹴ってしまったらしい。ざまぁみろだ。
「痛いなぁ、あーあ、俺痛いや」
大げさに腹をさする風早がじろーっと俺のことを見つめてくる。視線が痛かったが、逃げるようにまた布団で顔を隠した。
ギシ、とまたベッドが軋んだと思ったら布団越しに抱きしめられた。苦しくて布団から少し顔を出すとその隙間から風早が侵入してくる。
「や、やめ・・・」
「あー、あったかいなぁ」
「なんだよ」
がっちりと後ろから抱きしめられると、お互いの心臓の音が聞こえる。ドクンドクン、ドクンドクン。風早の鼻息が首元に当たって少しくすぐったかったが、我慢できないほどではなかった。
「ふふ、くすぐったい?」
耳元でそう囁かれて、今度は吐息が耳に当たる。びくりと体を動かせばまた笑い声が後ろから聞こえてきた。
「わかってるなら、やめろよ・・・っ」
「やめないっ」
ベロン、と耳を舐められてぞぞぞっとした。
「うぁっ、やめっ」
後ろに手を伸ばして、風早の頬をペタペタと触れば、こらと手首を掴まれる。余計に身動きが取れなくなって、フゥと息を吹きかけられるとまたぞぞぞっとした。
「や、やめってっ」
「やーだ」
あの意地悪な表情をしている風早が頭に浮かんで、きっと今その顔をしているのだろうと思った。
「ふっ、ぁっ」
動く足で、風早のことをゲシゲシと蹴るとまたこら、と怒られる。風早の両足で俺の足を挟まれて、足の自由まで奪われてしまった。
「は、離せよっ」
ジタバタと動けば、風早が強い力でまた抱きしめてきた。腕の傷が少し痛んだけど、それよりも風早の腕が暖かい。
「幸・・・、好きだよ。俺多分これから一生幸のこと、好きだよ」
「い、一生とか気安く言うなよ・・・」
照れくさくてそう言ったら、風早が至極真面目な声で「気安くないよ」と言う。でも、一生って、一生だ。俺はまだ17歳だから、寿命通りいけばあと60年近くもある。
「でも・・・」
「幸のお母さんも、俺のことちょっとは認めてくれたみたい。ばあちゃんも認めてくれてたんでしょ?だったら俺たち無敵だよ」
「・・・無敵」
「うん。俺誓うよ、幸のこと一生愛し続けるって」
風早の俺を抱きしめる腕が弱まる。するりと抜け出して、後ろを向けば至極真面目な顔をした風早がいた。一生は気安くない、と風早は言う。誓うよって、愛し続けるって風早は言う。いつもいつも風早は俺の求める言葉をくれる。俺はその言葉にどれだけ救われたことだろう。
「俺、も好き・・・、ずっと」
一生、とか愛してる、なんて俺が言ってもきっと安っぽくなってしまうから言えなかった。でも、俺だって風早と気持ちは一緒だ。
俺だって、一生風早を。
「嬉しい、ありがとう」
風早が少しずつ迫ってきて、むにゅっと唇同士が当たった。キスのあと風早は少し笑って「これは、寝る前のキス」と言った。確かに、寝る前のキスは必要かも知れない。
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