4 / 155

第4話

クラスに着いて、俺は鞄を自分の席に置くとすぐにトイレの個室に籠って持ってきたタオルで汗を拭った。トイレの中だけでも、とベストを脱いで少し涼む。シャツをパタパタとはたくと、冷たい風が首元を抜けていった。 ぺろ、とシャツを捲って自分の乳首の様子を見てみるが、やはり真っ赤なさくらんぼのように赤く腫れあがっている。 困った乳首である。俺は一つ大きなため息をついて、トイレの壁にもたれかかった。 これは一回抜いておく方がいいのだろうか、いやでも抜いてもどうせ擦れたら快感に犯されてしまうに違いない。 俺は自分のズボンを見つめて惨めな気分になった。パンパンに張りつめたそれ。ズボン越しに触れてみると固くなっているのを感じた。 「抜いておくか・・・」 時計を確認すると、チャイムが鳴るまであと十五分はあった。手早くやれば間に合うだろう。抜いてしまえば、もしかしたらこの気持ちの昂ぶりも、怒りも治まるかも知れない。 さっとズボンのチャックを下ろして、パンパンに張りつめたそれを出した。先からは透明な液体が出ていて、俺はそれをズボンが塗れないようにトイレットペーパーで拭う。 しかし、俺はそれ以降勃っているそれには触れることはなかった。 シャツのボタンを三つだけ外して、胸の真ん中で大きく膨らんだ乳首にそっと触れた。さっきまでのもどかしい快感とは打って変わった直接的な快感に思わず声が漏れる。 「あぁっ、はっ・・・」 声が漏れていることもあまり気にすることが出来ないくらい気持ちが良くて、俺は夢中になってそれを押しつぶしたり、指でコリコリと摘む。 「んぁっ、ぁっぁっ」 段々と大きくなっていく声と共に乳首を弄る手も大胆になっていく。 「誰かいるの・・・?」 不意に知らない声が聞こえて、驚きで俺は乳首をきゅっと掴んでしまった。 「あぁぁぅっぁっ!」 一際大きな声で出てしまい、パタタと白濁が飛んでトイレのドアに掛かる。乱れた息を整えながら、必死に思考を巡らせる。 あれ、俺今思いっきり喘いでなかった?しかも、人いたよな。 コンコン、とドアがノックされて、俺は背筋を伸ばして固まる。今更いないフリしても意味がないよな・・・。 「あの、大丈夫?」 優しい声だった。今日何があったのかを忘れてしまうくらいに優しい声色。はっと顔をあげると、ドアには俺のぶっかけた精液。それを見てようやく意識が戻ってきた。 「ほんとに大丈夫?心配だから開けて頂戴?」 いやはや、それだけはまずい。急いで飛び散った精液を拭おうとするが、トイレットペーパーも濡れていてうまく取れなくなっている。 「開けてってば」 ガチャガチャとドアを揺すられて、俺はまた背筋を凍らせた。相手は本当に心配してくれているのだろう。確かにこんなところで自慰しているなんて考えもしないよな・・・男の喘ぎ声だってそうそう聞けるものでもないし。 そんなことを考えていると、立て付けが悪いトイレだったのか、ガチャガチャと何度も揺すられたトイレの鍵はガコンと音を立てて開いた。 キィィと嫌な音を立てながらドアが開いていく。俺はそれを見つめながら、自分の高校生活が終わったと感じた。 「なーんてね?」

ともだちにシェアしよう!