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第6話
「へぁっ!?何言ってんだお前っ!」
驚きで大きな声を出してしまい、男にしー、と唇に指をあてがわれた。
「んー、だって可愛いんだもん。俺の好みってこと」
「はぁぁっ!?大体そんなこと学校でなんて・・・」
バタバタと暴れようとする俺を男は何だか楽しそうな顔で見ている。
「学校じゃなかったらいいの?」
俺の家なら誰もいないよ、と言い出した男に俺はもう耐えられなくて目頭が熱くなってくる。
「そ、そういう意味じゃっ・・・」
惨めすぎる、俺。ぽろっと零れ落ちた涙が手に落ちた。止まらない。
「意地悪過ぎた?ごめんね?」
さっきよりも幾分か優しい声だった。俺は自分の泣き顔を見られたくなくて、男の胸板に顔を押し付ける。無意識の行動だったが、それが男を喜ばせたらしい。
「もー、本当に可愛い。じゃぁ今日はここまでにしてあげるから」
その言葉に俺がコクコクと頷くと、男は優しい手つきでトイレットペーパーを使って俺の濡れたズボンを拭ってくれた。
「ほら、もう服着て。風邪引いちゃうよ」
そう言いながら、男はシャツのボタンも留めてくれて、ズボンのチャックも上げてくれた。
俺はそのまま男のされるがままになっていて。
「ここ、赤いの透けてる」
ちょん、と乳首をシャツの上から触られて思わず、んっと声を上げる。
「あぁ、だからベスト着てたんだ。暑くないの?」
男がトイレのドアに掛けられた俺のベストを見て言った。
「・・・暑いに決まってるだろ」
俺がそう言うと男は首を傾げる。
「え、夏とかどうしてるの?まぁ、今の時期でも大分暑いけど」
また秘密がバレてしまう、とか思ったけど今の俺には隠す気がもう起きなかった。
「・・・、絆創膏貼ってる・・・」
その言葉に男が目を輝かせた。いや、なんでそんなに嬉しそうなんだよ、お前。
「うそ!!えっ、見てみたい!!明日貼ってきてよっ!!っていうか、今日はどうして貼ってきてないの?」
そうだ、元はといえば全部姉が悪いのだ。姉に絆創膏を貼るのを止められたからこんなことに・・・。
俺は今頃大学にいるであろう姉に心の中で悪態をつく。
「姉ちゃんに、バレたから・・・」
「ははーん、バラされたくなかったら絆創膏貼っていくなとか言われたんだ?」
もう図星過ぎて何も言えない・・・。
「まぁ、そんな感じ・・・」
なるほどね、と頷く男の腕を掴んだ俺は男を睨みながら言った。
「お前も絶対に内緒だからな・・・」
「はいはい、わかったわかった」
本当にバラさないのだろうか。心に不安が残るが、もう今はバラさないという男の言葉を信じるしかないのだ。
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