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第13話

「ちょっと外肌寒いかも、幸シャツだけで大丈夫?」 「・・・平気」 「さっちゃん風早くんと仲良くね〜」 ニヤニヤと笑う姉ちゃんを軽くあしらって、外に出ると涼しい風が体を冷やす。 「その服可愛いでしょ、幸に似てるなって思って」 人気の少ない夜道を歩きながら、電灯に照らされた自分の服を見るが、そんなに俺はむすっとしていない・・・と思う。 「俺こんなにむすっとはしてない」 「してるしてる。あ、でも乳首弄ると可愛い顔になるよ?むすっとした顔も可愛いけど」 一日で何回こいつに可愛い、と言われたのだろうか。何だか慣れてしまった俺もあれだけど、言い返す気力ももうなかった。 「ねぇ、幸・・・。俺と付き合ってくれない?」 その言葉に思わず立ち止まる。小日向も俺に続いて立ち止まった。 「・・・へ?」 「だから、俺と付き合って欲しいの」 一瞬聞き間違いなのかと思って、聞き返すが返ってくるのは同じ言葉。 「俺と・・・、付き合う・・・?」 「そ、俺付き合ってる子には優しいよ?急に乳首触ったりはしないし」 「それは当たり前だっ!」 「あと、毎日絆創膏張り替えてあげる!」 「絶対嫌だ!!!」 ぶんぶんと首を横に振ると、小日向は一瞬悲しげな表情を浮かべたけれどこいつのペースに乗せられてはいけない。 俺はぐっと耐える。 「じゃぁせめて俺の名前呼んで?」 小日向にしては可愛らしい願いだった。俺はそれくらいならいいかな、と二つ返事で了承する。 「風早?」 「そ!もっかい呼んで!」 「風早・・・」 「幸」 「なんだよ・・・」 「そこはもっかい風早って呼んで、呼んだだけ〜って言い合うとこなんだけど!」 「そんなの知らねぇよ!」 二人で歩く夜道は少しだけ楽しかった。 ・・・少しだけ。

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