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【短編】声だけじゃなく

#一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負2018/05/19参加 お題 ・爛れた関係 ・たまには電話を ・誤解 制作時間は36分 「ミヤビ?」 あっ、しまった。 涙出ちゃってるや。 目の前でびっくりしてるのはマサキといって、妻子あるくせに夜な夜な俺のことを抱きに来る、ダンナの風上にも置けない男。 ひょんなことからセフレになり、セフレを経て愛人に昇格。 タイミングよくマサキの単身赴任が決まったから、俺も付いてきちゃってイマココ。 んで、なんで涙出ちゃってるかというと、いくらノー天気な俺でも、時々悲しくなる時があるわけで。 こんな爛れた関係、いつまで続くのか。 いつまで続けられるのか。 アメ1個に対してムチ50ぐらい寄越してくるこの男との間に、体の繋がり以外の何かはあるのか? 普段はなるべく考えないように過ごしてるけど、やっぱり時々不安や寂しさが津波みたいに押し寄せてきて、ココロもカラダもかっさらわれそうになる。 「…っ、ごめっ」 慌てて涙を拭う俺。 愛人の分際で、こんな風に涙なんか見せたりして。 重がられたら終わりだ。 だからマサキの前では弱みを見せないように、してるのに。 いつでも終わっていいんですよ、って顔、してるのに。 「…つらいか?」 マサキの長い腕がふんわり俺を包んだ。 ヤるときの強引な感じじゃなくて、壊れ物扱うみたいな。 「な、何、誤解誤解!なんもつらくなんか」 慌ててカラ元気で笑い、その腕から逃れようとするけど、マサキは許してくれない。 つらいって言ったら、終わりになっちゃうんだろ? 「目に涙ためたまま強がるな。言えそうなことなら言ってみろ」 久しぶりのアメ、なのかなあ。 ちょっとだけ、声が優しい…。 そう、この声。 腹に響く、腰にくる、重低音。 落ち着くような、興奮するような。 ずっと聴いてたい… 「じゃ、えっと!…たまには、電話、を」 引かれないかな… 決死の思いで言ってみたけど。 図々しいと思われたかな。 マサキはじーっと俺の顔見てる。 そりゃそうか、体の関係なのに電話で話したいとか何恋人みたいなこと言ってんだと思ってるだろうな… 突然頭の上にマサキのでっかい手が乗っかったと思ったら、わしゃわしゃと髪を乱された。 かなりキメキメのヘアスタイルに何してくれてるんすか。 「電話で話すヒマがあるなら、ここに来る。俺は、そうしたい」 そっか…電話じゃヤれないもんな。 やっぱ、気持ちよくなれもしないのに俺に割く時間なんか勿体ないかぁ。 現実を突き付けられて肩を落としていたら、唇にあったかくて柔らかい感触が乗って、今度は髪をわしゃわしゃじゃなくさらさらと撫でられた。 で、カップル繋ぎっていうの?俺の指にマサキの指が絡んできた。 「電話じゃこんなこともできない」 あーもう。 せっかく引っ込めた涙が、また溢れてきたじゃん…どうしてくれんだよ。 【終】

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