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それはまるで夢のような 5

「あっ!」  シートにだらしなく持たれてた俺は、前のめりになって叫んだ。 はるか遠くの海上に、花火が見えたんだ。 遠いから、そんなにでっかくは見えないけど、視界を遮るものはなくて。 「み、見た?花火!」  コーフン気味にマサキに声をかけるけど、相変わらず知らん、ってつれない一言が返ってきただけ。 一瞬だったし見えなかったのか。もったいね。  じきに次のサービスエリアの表示が見えてきて、そっちの方に車線変更した。 あ、そろそろちゃんと休憩するんだな。またコーヒーでも買ってこようか。  車を停め、ドアを開けようとした瞬間、眼前に花火が広がった。 「うわあ!」  なんとも子どもみたいな歓声を上げてしまった。 あちこちカーブしながらだからわからなくなってたけど、さっき花火が上がった場所の真正面なんだ、ここ。 マサキは、わかっててここに停めてくれたのかな?  …訊いても多分ちゃんと答えてくれなさそうだから、黙っとこ。  俺が目を輝かせて身を乗り出して花火を見つめていると、マサキは車から降りてってしまったけど、俺は花火を見るのに夢中だった。  打ち上げ花火を見たのなんて、何年ぶりだろ? 子どもの時以来かも。 付き合ってた相手と行ったり、しなかったなあ。  今日が、初めて。  戻ってきたマサキはやっぱりコーヒーとかタバコとか買い込んできたようで。しまった買いに行くの忘れてたや。 極悪なほどに強力なメンソールのタブレットも買ってる。よっぽどお疲れだな、早くちゃんと休憩させないと… 「で、今日はどっちがいい」  はっ?!急になんの問いかけでしょうか。 いつも主語がないんですよね! 「あの、どっち、とは」 「ご休憩か車ん中か」  ん?話が見えません… 察する能力とか持ち合わせてないので、きちんと一から十まで言ってもらえませんかね? …という俺の本音を察してくれたのか、マサキが口を開いた。 「お前、さっきからご休憩って言ってる意味、わかってる?」 「そりゃもちろん、運転しっぱなしだからちゃんとここらでゆっくり休んで…」  マサキは俺から顔を背けて深いため息を吐いた。 「…やっぱりか」  なんて言って。 「ちょ、何がやっぱりなんだよ、全然話見えてこな」  運転席に身を乗り出して抗議してたら捕獲された。 やべー、抱きしめられてるだけなのに超ドキドキする。何で?車ん中だから? 自分のドキドキの合間に、打ち上げ花火の音が混ざる。 そっと、こわごわ、マサキにも腕を回す。

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