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それはまるで夢のような 6
「一緒に花火見れて、嬉しい…こんなん初めてで」
花火の音を聴きながら胸に身を委ねて目を閉じてると、心地良くてつい本音が漏れてしまった。
「そうか」
マサキはそれだけしか言わなかったけど、抱いてくれてる腕の力が一瞬だけ、少し強くなった気がした。
ずっと、こうしてたいなあ。
朝なんか来なきゃいいのに。
東京なんか、行かなきゃ…
ってこら!
どこまで高望みしてんだ俺!
家族の元に帰るのは当たり前だってーの。
その前に、マサキは俺のために、こんな時間を割いてくれてるんだ。
目一杯楽しまなきゃ!
「ん、マサキ」
胸の中から顔を出してきて、上を向くとすぐそこにマサキの顔がある。
俺は多分もうものすごく、物欲しそうな顔してると思う。
花火の音も聞こえなくなってきた。
素直におねだりすれば、マサキは顔を下に向けて、こつんとぶつかるように軽いキスをくれた。
こういうキスは愛されてるって感じがして、すごく心は満たされるんだけど、カラダ的には物足りない。
腰に回していた腕を首に移動させて、伸び上がってもっととおねだりすれば、今度はお望み通りのねちっこいキス。
舌を差し出せば絡ませてくれて、痛いぐらい吸われて。
こうなったらまた俺はさらにさらに欲張りになって、キスだけじゃ足りなくなるんだよな…
「ここでこのまま続けんのか?」
心の声が聞こえたかのように、マサキがきいてきた。
えっ、ダメでしょ。サービスエリアの駐車場ですよここ。
俺はとっさに首を振ったけど、車の中で、っていうのはなかなかそそられるんだよな…
「なら、ご休憩行く?」
出た、謎ワード『ご休憩』。
ほんと、訳がわからないから教えて。んで早くヤろ。
「ご休憩って、どこで…?」
あれ、マサキがフリーズした。
息も絶え絶えになりながら、恥を忍んで質問したんだけど。
「エロいくせにウブなのかバカなのか…」
再起動したマサキはそんなことをブツブツ言ってる。俺のこと?
「ご休憩ってのはエロいことするホテルで一発ヤることだ、車ん中でやるかホテル行くかってきいてんだ」
あ、そうなんだ?
そういうことねー。
なーんだ、そんなら最初っからそういうふうに…
ボン
と音が鳴りそうに、顔から火が出たかと思うぐらいに、顔が熱くなって汗が出てきた。
車でヤるかホテルでヤるか?
その選択を迫られてるの?俺が?
俺に委ねられてる訳ですか?
そんなの困るよ。
だって。
どっちも魅力的!
どっちもしたことないし!
それなりに付き合った人数はいるけど、誰ともそんなことしたことない。
車持ってる奴少なかったし、一人暮らししてからはずっと俺んちだったし、その前はホテル代ケチって外でとかネカフェでとか、そんなばっかり…
思い返せば、なかなかヒドイな、俺の性歴史。
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