15 / 25

それはまるで夢のような 6

「一緒に花火見れて、嬉しい…こんなん初めてで」  花火の音を聴きながら胸に身を委ねて目を閉じてると、心地良くてつい本音が漏れてしまった。 「そうか」  マサキはそれだけしか言わなかったけど、抱いてくれてる腕の力が一瞬だけ、少し強くなった気がした。  ずっと、こうしてたいなあ。 朝なんか来なきゃいいのに。 東京なんか、行かなきゃ…  ってこら! どこまで高望みしてんだ俺! 家族の元に帰るのは当たり前だってーの。 その前に、マサキは俺のために、こんな時間を割いてくれてるんだ。 目一杯楽しまなきゃ! 「ん、マサキ」  胸の中から顔を出してきて、上を向くとすぐそこにマサキの顔がある。 俺は多分もうものすごく、物欲しそうな顔してると思う。 花火の音も聞こえなくなってきた。 素直におねだりすれば、マサキは顔を下に向けて、こつんとぶつかるように軽いキスをくれた。  こういうキスは愛されてるって感じがして、すごく心は満たされるんだけど、カラダ的には物足りない。 腰に回していた腕を首に移動させて、伸び上がってもっととおねだりすれば、今度はお望み通りのねちっこいキス。 舌を差し出せば絡ませてくれて、痛いぐらい吸われて。  こうなったらまた俺はさらにさらに欲張りになって、キスだけじゃ足りなくなるんだよな… 「ここでこのまま続けんのか?」  心の声が聞こえたかのように、マサキがきいてきた。 えっ、ダメでしょ。サービスエリアの駐車場ですよここ。 俺はとっさに首を振ったけど、車の中で、っていうのはなかなかそそられるんだよな… 「なら、ご休憩行く?」  出た、謎ワード『ご休憩』。 ほんと、訳がわからないから教えて。んで早くヤろ。 「ご休憩って、どこで…?」  あれ、マサキがフリーズした。 息も絶え絶えになりながら、恥を忍んで質問したんだけど。 「エロいくせにウブなのかバカなのか…」  再起動したマサキはそんなことをブツブツ言ってる。俺のこと? 「ご休憩ってのはエロいことするホテルで一発ヤることだ、車ん中でやるかホテル行くかってきいてんだ」  あ、そうなんだ? そういうことねー。 なーんだ、そんなら最初っからそういうふうに…  ボン  と音が鳴りそうに、顔から火が出たかと思うぐらいに、顔が熱くなって汗が出てきた。 車でヤるかホテルでヤるか? その選択を迫られてるの?俺が? 俺に委ねられてる訳ですか?  そんなの困るよ。 だって。 どっちも魅力的! どっちもしたことないし! それなりに付き合った人数はいるけど、誰ともそんなことしたことない。 車持ってる奴少なかったし、一人暮らししてからはずっと俺んちだったし、その前はホテル代ケチって外でとかネカフェでとか、そんなばっかり…  思い返せば、なかなかヒドイな、俺の性歴史。

ともだちにシェアしよう!