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パラレル番外編-2

精一杯の抵抗も空しく詰襟を脱がされ、長袖シャツもボタンが飛び散る勢いで肌蹴させられた。 怖い。 何にも知らない男に組み伏せられて制服を剥ぎ取られて、その上……キスされた。 「んんんんん……ッ!」 苦しい。 掴まれた手首がずっと痛い。 怖い、逃げたい。 なんでどうして、どうして、何故? 「や……ッいやだッ!」 一瞬だけ青年の力が緩み、由紀生は利き手を思いきり振り上げた。 当てずっぽうに振り上げられた手の爪は相手の頬を鋭く掠った。 自分を押さえつけていた力がまた弱まり、由紀生は青年の下から慌てて飛び出した。 本当は今すぐにでも外へ逃げたかったけれど全身が震えて体が言うことを聞かずに。 ベッドの隅っこで縮こまるのがやっとだった。 青年は俯きがちに片頬を押さえている。 「……どうしてこんなひどいことっ……」 由紀生は震える声を喉奥から絞り出した。 すると。 青年は片頬を押さえたままゆっくり由紀生に視線を投げかけてきた。 「オヤ…………俺は由紀生のこと知ってる」 「……どうしておれの名前」 「由紀生は……俺のこと知らねぇ? 全く?」 知らない、知らない、こんな人知らない。 今まで見たこともないし、こんな大学生っぽい年上の人、同級生でもないし、友達のお兄さんにもいなかったし、近所にだって、学校にだって、見たことない、知らない、知らない、知らな、 「俺のことわからねぇ?」 ベッドの隅っこで震えながら青ざめていた由紀生は……息を呑む。 ……本当に知らない? ……本当に見たことがない? 説明の仕様がない不可思議な既視感に囚われた。 震えは遠退いて、心臓が圧迫されるような息苦しさは、やがて微熱を伴う高鳴りに変わった。 ……あれ? ……怖くない? ……むしろ何だか……可哀想?

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