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孕みパラレル番外編-1

かぽーん…… 「春の温泉もきもちいいね、カズ君」 無色透明な露天風呂のお湯に浸かった由紀生はとっても満足げに呟いた。 対面には鬱蒼と生い茂る山々、眼下には川が流れている。 マイナスイオンとやらがだだ漏れ状態の中で頂くお湯は格別なものがあった。 「二人っきりの露天風呂、すごく贅沢だね」 夢見る乙女みたいに由紀生は息子の数也へ微笑みかけた。 由紀生と数也は近場にある温泉地へ一泊二日の旅行へ来ていた。 飲食業に勤める数也に合わせて由紀生が平日に休みをとり、春休み中ながらも全室離れの温泉宿は他の客を気にする必要もなく贅沢感満載、とびきり快適だった。 夕方、備え付けの露天風呂を満喫し、部屋で美味しい食事、お酒も飲んで、それから数時間おいて、またお風呂。 「おやすみ、カズ君」 そして就寝。 しかし、もちのろん、究極ファザコン属性の数也がすんなり眠りにつくわけがなかった。 畳の上に並んで敷かれたお布団。 明かりはすべて消されて真っ暗な和室、自分の寝床から這い出た数也はすぐ隣のお布団の中へ……。 「カズ君……?」 手探りで探り当てた背中に抱き着けば小さな呼び声が。 「真っ暗、怖い? 豆電球つけようか?」 温泉でぽかぽかする全身。 火照りが引かずに目が冴えていた由紀生はクスクス笑った。 「あ、思い出した……ずっと前、カズ君がまだ小さい頃、こんな風に旅行に来て……カズ君、暗いの怖いって、お父さんの布団の中に入ってきたんだよ?」 「いつの話してんだ、オヤジ」 ぎゅっと、自分に絡みつく両腕に力がこもる。 由紀生はちょっと身じろぎした。 ……あの頃はこの両腕にすっぽり収まっていたのに。 ……今じゃあ、自分が、カズ君の両腕の中に。

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