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9-思い出しすけべ

唐突ながら話は過去に遡る……。 どうしよう。 カズ君とセックスしてしまった。 親子なのに。 男同士なのに。 ……うん、ゆうべのことは一夜の過ちとして記憶の底に封印しよう。 そしてやっぱりカズ君といっしょに小曾根先生(カウンセラー)のところへ相談に行こう。 仕事に身の入らない大幅残業込の一日を終えた由紀生は重い足取りで帰宅した。 もうすぐ日付が変わる時間帯。 今日も自分より後から帰ってくるんだろうなと、手持ちの鍵でガチャガチャ開錠し、そっとドアを開けてみれば。 「ひっ」 目の前に息子の数也がいた。 「ンだよ、人を幽霊みてぇに」 「だ、だってカズ君いるって思わなかったから、え、あれ、あれ?」 「おかえり、オヤジ」 十八歳にして高校一年生の数也は昨日までパツキン髪、顎にヒゲ、耳にピアス、わかりやすい反抗期ファッションが長々と続いていた。 それが。 目の前に立っている今現在の息子は短髪黒髪、ヒゲなし、ピアスなし。 制服には相変わらずじゃらじゃらしたものがぶら下がっていたが、それでも随分な変わりようだ、とてもいい意味で。 わぁ、カズ君、こう言ったら何だけど小綺麗になってさっぱりした。 一日中胸を蝕んでいたモヤモヤも忘れてイメチェン息子に由紀生が目を奪われていたら。 腕をぐいっと掴まれた。 危うく靴のまま上がりそうになって、慌てて不恰好に脱ぎ捨て、そのまま息子の部屋へぐいぐいぐいぐい……。 「カっカズ君、だめーーー!」 海外のラウド系ロックバンドのポスターだらけな壁にもじゃらじゃらが垂れ下がった、雑然とした部屋のベッドに押し倒されて由紀生は必死になって抗った。 「昨日のあれは……っあれだよ!過ちだよ!」 「あ?」 「繰り返したら駄目なことっ!二度としちゃいけないこと!」 「意味はわかってんだって、バカオヤジ」 自分より華奢な両手首を片手でまとめて頭上に押さえつけた数也は、ぐっと上体を倒し、正に恥じらう父親の顔を覗き込んだ。 「お、親に対して……ううん、他の誰かにも……バカなんて言っちゃダメ、カズ君……」 「……あークソ……」 「ッ、カズ君!こら!」 恥じらいながらも叱ってくる由紀生の顎を力任せに掴んで持ち上げた。 「痛ッ」 「どんだけ俺を煽れば気が済むんだよ、このエロオヤジ」 少し色褪せた息子の唇が震える父親の唇を覆い隠した。 目を見開かせて体をばたつかせる由紀生。 簡単に捻じ伏せる数也。 長年に渡り自分を苦しめてきた悪循環からやっと抜け出した青少年は積年の恨みでも晴らすような振舞で意中の人なる近親者を嬉々として虐げた。 「…………ああ…………っ!!」 結局、ゆうべのリプレイ。

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