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パラレル番外編-1/由紀生先生受け

「ユッキーの授業わかりやすいよね」 「優しーし、キレーでカワイーし、和む!」 「そういえばこどもいるらしいよ、この学校に」 「え!高校生のこどもいんの!?」 「確か一年で……あ、ほら、あのコだよ」 「「「うそだろ、全く似てねぇし、あれで一年?」」」 似てなくて悪かったな。 高校一年生の数也が通う高校には父親の由紀生が教師として勤務していた。 担任、授業受持になったことはない。 そういう決まりなのだろう。 数也は十八歳だが未だに高校一年生している。 当校の教師の息子だろうと総合成績が悪ければ正当な処分が下る、真っ当な学校方針、恐れ入る。 髪はパツキンに、顎にヒゲ、喫煙、じゃらじゃらしたものを身につける、耳に穴開ける。 ただ学校には毎日さぼらず登校している。 それでもわかりやすい反抗期が目下続いている息子に由紀生は途方に暮れかけていた。 「カズ君、何が不満なの? ねぇ、どうして?」 自宅、自室のドア越しに涙ながらに由紀生に問われて、それでも、数也は答えを言わなかった。 「ユッキー先生っ」 「さっき授業でわからないことがあって!」 「本当? どの辺かな」 「多目的ルームで教えてくださいっ」 積極的な女子生徒に腕をとられて由紀生は廊下を歩いていた。 ふと、横顔に視線を感じて振り返ってみれば。 制服ズボンのポケットに両手を突っ込んだ数也と目が合った。 「あ」 数也はジロリと父親を睨んで、壁の向こうに、消えた。 昔のカズ君はとても優しくていい子だった。 『あーあ、アリジゴクさんがかわいそう』 幼いながらに弱肉強食、食物連鎖を理解している、賢い子供だった。 それがどうしてああも極端な反抗期を迎えたのか。 教師生活に身を費やして家庭が疎かになっていた、それは、うん、否定できない。 でも、唯一の家族であるカズ君のこと、お父さんはいつだって思っていたよ? 至らない父親でごめんね、カズ君。

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